著者
青木 亮三
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.45, no.9, pp.621-628, 1990-09-05

脳は人間存在の根元に関わるものとして究極の興味ある対象であるが, まるで分かっていない. 高度の判断を司る神経線維の絡み合いは余りに複雑で, 実体の解析を拒否している. ところがその脳が全体として電気信号を発している, しかも, それが驚くほど単純な波形で観測されている. 多数の構成要素からなる系の単純な集団振動, これこそは相関の強い多体系として, 物理学研究者にとって好個の対象と考えられる. いままで生体については, ともすれば性急に物理的概念を当てはめようとしたり, 手近の解析的手法をそのまま応用することが試みられてきたが, この解説から対象に即した新しい観方やアプローチが触発されれば幸いである.

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