著者
真鍋 麻美 鍵谷 昭文 丹藤 伴江 越前屋 成広 相良 守峰 齋藤 良治
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.399-404, 1996-06-01
被引用文献数
4

妊娠中にはX線被曝の問題があるため妊婦の骨量を測定したデータは少なく, とくに骨量変動の著しい海綿骨の含有率の高い椎体や大腿骨などの骨量を妊娠中にDual energy X-ray absorptiometry (DEXA) 法を用いて測定した報告はほとんどみられない。今回私たちは, 妊産褥婦および非娠婦の骨量を超音波骨量測定装置 (Achilles Bone Densitometer: Lunar社製) を用いて測定するとともに生化学的骨代謝パラメーターを測定し比較検討した。1. 超音波骨量測定装置による超音波伝播速度 (Speed of sound: SOS) と超音波減衰係数 (Broadband ultrasound attenuation: BUA) から算出されるstiffnessは, 非妊婦群, 妊娠初期群, 妊娠中期群, 妊娠後期群, 産褥群でそれぞれ, 88.3±11.0, 88.4±11.5, 86.5±8.6, 81.4±10.6, 85.3±12.5%で, 妊娠後期群では妊娠初期群と比較して有意 (p<0.05) に減少していた。2. intact osteocalcine (i-OC) は妊娠初期群で5.0±2.3ng/ml, 妊娠中期群で3.7±1.0ng/ml, 妊娠後期群で4.4±0.9ng/mlと非妊時の正常範囲内にあり, 産褥群では11.3±4.2ng/mlと妊娠中に比較して高値であった (p<0.01)。尿中Pyridinoline (Pyr)/Creatinine (Cre) および尿中Deoxypyridinoline (D-Pyr)/Creは, 妊娠初期群でそれぞれ34.0±10.1pmol/μmol, 4.7±1.0pmol/μmol, 妊娠中期群で46.0±6.7, 6.1±1.0, 妊娠後期群で52.0±11.7, 8.0±2.0と妊娠経過とともに増加した。産褥群ではそれぞれ71.7±6.0pmol/μmol, 9.3±2.7pmol/μmolと高値を示し, 妊娠各時期と比較して有意差 (p<0.01) を認めた。3. 補正した血清カルシウム (Ca) とイオン化Ca (i-Ca) およびintact parathyroid hormone (i-PTH) には妊娠産褥期には有意の変動は認められなかった。以上の成績より, 妊娠中期群および妊娠後期群の骨代謝は骨吸収優位であり, 産褥4週目では骨形成優位の高代謝回転状態にあること, さらに妊娠時には血清Caおよびi-Caは非妊時の正常値域に保たれており, 副甲状腺機能亢進状態にはないもののCaのturnoverは亢進していることが示唆された。

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