著者
鍵谷 昭文 齋藤 良治
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

性ホルモン投与における中枢神経系の形態の変化を主にゴナドトロピン分泌を調節するLH-RHニューロンのシナプス可塑性の変化から検討することを目的として、性機能の推移や性差に伴う視床下部、特に視索前野と弓状核領域のLH-RHニューロンおよびグリア数とその分布状況、軸索樹状突起シナプス数、軸索細胞体シナプス数やその変化などについて電子顕微鏡を用いて超微形態学的研究をおこなった。今回の補助金により、電顕材料を計画的に作成するとともに、免疫組織学的検索をおこなうことができた。各性周期のラットおよび卵巣摘除後、さらにエストロゲン投与後に潅流固定を実施し、脳組織を摘出した。脳の検索部位についてLH-RH免疫組織化学的検討を実施した。透過型電子顕微鏡を用いてLH-RH免疫組織陽性細胞とLH-RHニューロンについての超微形態学的変化の検討をおこなった。双極性のLH-RH免疫組織陽性細胞はラット視索前野を含め視床下部に比較的広く分布していたが、視索前野および弓状核のLH-RHニューロンはドパミンニューロンやGABAニューロンなどともお互いにシナプス結合していることが判明し、この部位は生殖内分泌学的には極めて重要な中枢部位と考えられた。性周期の各時間では、弓状核および視索前野における軸索細胞体シナプス数には変動がみられ、PROSTRUSの時期が最も多く、次いでDIESTRUS,METESTRUS,ESTRUSの順であった。しかし、性周期に伴う変化は軸索樹状突起シナプスではみられなかった。一方、卵巣摘出後のラットでは軸索細胞体シナプス数は減少し、特にEstradiol投与後では平均28.8%の減少がみられたが、この減少は経時的に回復する傾向が認められた。このように、エストロゲンはラット視索前野および弓状核のLH-RH免疫陽性軸索細胞体シナプス数の変化に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
山崎 峰夫 森川 肇 望月 眞人 佐藤 和雄 矢内原 巧 齋藤 良治 平川 舜 蒲田 忠明
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.54, no.7, pp.925-934, 2002-07-01
参考文献数
14

日本人について妊娠末期のBishop scoreと妊娠・分娩経過との関係を初産・経産別に明らかにする共同調査を行った.妊娠期間,分娩所要時間,分娩様式,羊水混濁の有無,新生児アプガースコアに関し,第1報(日産婦誌2000;52:613-622)では実際の統計量成績を,また第2報(日産婦誌2001;53:1809-1818)では,それらと妊娠末期のBishops coreとの間の強い相関性を報告した.そこで,今回はこれらの事象が妊娠末期のBishop scoreにより予測しうるかを検討した.妊娠37~39週におけるBishop scoreの点数別の該当妊婦ののべ人数と受診後1週以内の分娩例数を集計した.また,妊娠37,38あるいは39週のBishop scoreの点数別に41週0日以降の分娩,分娩所要時間延長(初産婦24時間以上,経産婦12時間以上),手術分娩(吸引分娩,鉗子分娩あるいは緊急帝王切開),羊水混濁および低アプガースコア(出生後1分のアプガースコアが7点以下)の症例数を調べた.次いで,各事象を予測するための基準となるBishop scoreを1点から8点の8通りそれぞれにつき感度と特異度を算出し,ROC曲線により予測に最適なBishop score値(main Bishop score値)を求めた.なお,main Bishop score値の予測への有用性はこれを境とした二群間で各事象の頻度に有意差がある場合とした.初産婦・経産婦とも1週間以内に分娩となる頻度は50%を超えるのは妊娠37~39週のBishop scoreが6点以上のときであったが,感度を考慮すると初産婦では4点以上,経産婦では5点以上のとき予測上の有用性があった.他の各事象を予測するのに有用なBishop scoreは,i)41週以降の分娩:初産婦,経産婦とも妊娠37週3点以下,38週3点以下,39週5点以下,髄)分娩所要時間延長:初産婦では妊娠37週2点以下,38週2点以下,39週4点以下,経産婦では妊娠37週2点以下,妊娠38週1点以下,iii)羊水混濁:初産婦では妊娠37週2点以下,38週1点以下,39週2点以下,経産婦ではいずれの週数でも3点以下であった.なお,手術分娩と低アプガースコアについては,初産婦,経産婦ともBishop scoreによる予測は困難と思われた.以上の成績より,一週間以内の分娩,妊娠期間延長,分娩所要時間延長,羊水混濁を予測するうえで妊娠37~39週のBishop scoreが有用であることが窺われた.
著者
齋藤 良治 橋本 哲司
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.N83-N86, 1997-04-01
著者
真鍋 麻美 鍵谷 昭文 丹藤 伴江 越前屋 成広 相良 守峰 齋藤 良治
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.48, no.6, pp.399-404, 1996-06-01
被引用文献数
4

妊娠中にはX線被曝の問題があるため妊婦の骨量を測定したデータは少なく, とくに骨量変動の著しい海綿骨の含有率の高い椎体や大腿骨などの骨量を妊娠中にDual energy X-ray absorptiometry (DEXA) 法を用いて測定した報告はほとんどみられない。今回私たちは, 妊産褥婦および非娠婦の骨量を超音波骨量測定装置 (Achilles Bone Densitometer: Lunar社製) を用いて測定するとともに生化学的骨代謝パラメーターを測定し比較検討した。1. 超音波骨量測定装置による超音波伝播速度 (Speed of sound: SOS) と超音波減衰係数 (Broadband ultrasound attenuation: BUA) から算出されるstiffnessは, 非妊婦群, 妊娠初期群, 妊娠中期群, 妊娠後期群, 産褥群でそれぞれ, 88.3±11.0, 88.4±11.5, 86.5±8.6, 81.4±10.6, 85.3±12.5%で, 妊娠後期群では妊娠初期群と比較して有意 (p<0.05) に減少していた。2. intact osteocalcine (i-OC) は妊娠初期群で5.0±2.3ng/ml, 妊娠中期群で3.7±1.0ng/ml, 妊娠後期群で4.4±0.9ng/mlと非妊時の正常範囲内にあり, 産褥群では11.3±4.2ng/mlと妊娠中に比較して高値であった (p<0.01)。尿中Pyridinoline (Pyr)/Creatinine (Cre) および尿中Deoxypyridinoline (D-Pyr)/Creは, 妊娠初期群でそれぞれ34.0±10.1pmol/μmol, 4.7±1.0pmol/μmol, 妊娠中期群で46.0±6.7, 6.1±1.0, 妊娠後期群で52.0±11.7, 8.0±2.0と妊娠経過とともに増加した。産褥群ではそれぞれ71.7±6.0pmol/μmol, 9.3±2.7pmol/μmolと高値を示し, 妊娠各時期と比較して有意差 (p<0.01) を認めた。3. 補正した血清カルシウム (Ca) とイオン化Ca (i-Ca) およびintact parathyroid hormone (i-PTH) には妊娠産褥期には有意の変動は認められなかった。以上の成績より, 妊娠中期群および妊娠後期群の骨代謝は骨吸収優位であり, 産褥4週目では骨形成優位の高代謝回転状態にあること, さらに妊娠時には血清Caおよびi-Caは非妊時の正常値域に保たれており, 副甲状腺機能亢進状態にはないもののCaのturnoverは亢進していることが示唆された。