著者
藤田 喜久
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1377-1386, 1969-12-01

妊婦尿中に著増するestrogenは胎児副腎から分泌されるdehydroepiandrosterone(以下DHEAと略す)を材料として胎盤で主として産生される.このDHEAの胎児副腎からの分泌調節機序解明の為,生後数日間の新生児にACTH,HCG,dexamethasoneなどを負荷し,その前後の尿中DHEAの排泄量及びPorter-Silber chromogen(以下PSCと略す)排泄量をも測定し,比較検討した.DHEAの測定法についてはColasの方法にアルカリ洗浄による尿色素の除去及びisotope dilution法を導入改良検討してその精度を高めることが出来た.即ち本法による最低測定限界は5μg,回収率は80%であつた.薄層クロマト上のRf値及び硫酸発色による吸収spectrumの検定によりDHEAであると同定した.本実験結果から1)新生児の尿中DHEA及びPSC排泄量は出生後数日間は余り変化がなく,この時期では副腎胎児層の退縮はいまだ軽微であることが示唆された.2)ACTH投与群ではDHEA測定値は222μg/dayより939μg/day(P>0.06)に,PSCは224μg/dayより1451μg/day(P>0.02)といずれも著増な示し,dexamethasone投与群ではDHEAは279μg/dayより63μg/day(p>0.02)と著減し,PSCも270μg/dayに比し162μg/day(P>0.06)と減少した.これらのことから,胎児副腎の内分泌機能はACTHの調節下にあるものと思われ,HCGに関しては投与前後において両ステロイド共変化がみられなかつたことから,その調節因子としての意義を持たないことが示唆された.

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