著者
大場 鉄志
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.18, no.11, pp.1309-1316, 1966-11-01

妊娠時には内因性のCa需要が増加する事はよく知られており, 妊娠末期の胎児は25〜30grのCaを含んでいるが, その大部分は妊娠末期に母体保有のCaから摂取されたものといわれている. その他母体は妊娠による全身的変化や胎盤形成の為にもCaを必要とし, その増大した需要のため母体は内因性のCa欠乏状態に陥つているという事が考えられる. この内因性のCa欠乏状態及びそれに対する対策については案外に検討されていない様である. 従つて私はまず, 妊娠, 産褥時のCa代謝の変化を知り, 更にそれに対する対策を明らかにし, 妊婦栄養指導の参考に供したいと思う. 本編ではCa含有製剤非投与妊婦について, 妊娠, 産褥時のCaの推移を窺うと共に, Ca負荷試験を行い, 内因性のCa欠乏状態を調べ次の結果を得た. 1)血清総Ca濃度は共存するP濃度が5mEq/L以下であれば423mμのCa Bandを使つて焔光法で測定出来る. 2)1日尿中排泄Ca量は任意に採尿した尿についてCa-Creatinineより推定出来る. 3)血清総Ca濃度は季節的に変動を見ない. 4)血清総Ca濃度, 尿中排泄Ca量は妊娠5ヵ月より低下し始め, 妊娠10ヵ月で最低となり, 産褥7日目にほぼ非妊婦値に回復するが, その低下度は尿中排泄Ca量が遥かに著明である. 5)血清イオン化Ca濃度は, 妊娠, 産褥時共に殆んど変化が認められない. 6)妊娠の進行に併う腎細尿管Ca再吸収率の変化は見られない. 7)臍帯血総Ca濃度, イオン化Ca濃度は, 母体血のそれより高値を示し, しかもイオン化Ca濃度は非妊婦値より高値である. 8)妊婦に負荷試験を行うと、妊娠月数が進む程血清総Ca濃度の上昇度, 毎時尿中排泄Ca量の増加が低下して行き, 産褥6日目では非妊帰の変化に近い傾向を示す.

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こんな論文どうですか? 妊娠とCa代謝に関する研究(大場 鉄志),1966 http://t.co/DivmxPOX 妊娠時には内因性のCa需要が増加する事はよく知ら…
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