著者
金岡 毅 清水 博 松岡 功 田口 星 白川 光一
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.233-242, 1982-02-01

妊娠初期に胎児頭殿長または大横径の超音波計測によって在胎週数が確認されており,妊娠末期に胎児腹囲および大横径の超音波計測を打ってWarsof et al.の方法で算出した推定胎児体重が,仁志田の日本人における胎内発育曲線で10 percentile以下であった子宮内胎児発育障害の22例について,母体の安静,高蛋白食,allylestrenol 1日30mg投与からなる出生前治療を行い,胎児推定体重,腹囲,大横径,母体血漿エストリオール,血漿ヒト胎盤ラクトーゲン,血漿プロゲステロン,血清耐熱性アルカリフォスファターゼおよびロイシンアミノペプチターゼの治療前後の変化を観察した.その結果,(1)平均発見週数33.8±2.1週で平均1431±284gであった胎児推定体重は,治療の結果最終在胎週数39.5±1.8週で平均2612±451gと増加し,1週あたり平均212±67gの体重増加を示した.これは仁志田の胎内発育曲線の1週あたり平均体重増加162±43gと比較して有意に高い増加率であった.しかしながら出生体重においては仁志田の基準で22例中11例(50%)がなお10 percentile以下であった,(2)推定胎児体重の最終計測値と出生体重との間には相関係数0.82,Y=1.01X+17.5の相関があり,Warsof et al.の推定胎児体重測定法が子宮内胎児発育障害の出生前診断に極めて有用であることが判明した.(3)母体生化学値のうち,血漿エストリオール値が最も子宮内胎児発育障害の診断に有用であることが見出された.出生前治療によって,血漿エストリオールは平均2.1土1.5から2週後には4.1±3.6ng/mlに,尿中エストリオールは平均14.0±6.9から2週後には23.7±11.2mg/dayに,血漿プロゲステロンは平均110±14から2週後には133±31ng/mlに,それぞれ推計学上有意に増加した.これらのステロイド値増加は,少なくともその一部はallyletrenolの胎盤賦活作用によるものと推定された.

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