- 著者
-
清水 博之
- 出版者
- 日本ウイルス学会
- 雑誌
- ウイルス (ISSN:00426857)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.1, pp.49-58, 2010-06-25 (Released:2011-02-15)
- 参考文献数
- 50
- 被引用文献数
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世界ポリオ根絶計画は,当初,2000年までの根絶達成を目標としていた.しかし,目標から10年が経過した2010年においても,近い将来のポリオ根絶の目途は立っていない.2010年現在,ポリオ常在国であるアフガニスタン,パキスタン,インド,ナイジェリア4カ国以外の国・地域では,地域固有の野生株ポリオウイルス伝播は認められていない.単価経口生ポリオワクチンの積極的使用にも関わらず,ポリオ常在国4カ国では,いまだ1型および3型野生株ポリオウイルス伝播が継続しており,ナイジェリアとインドに由来する野生株ポリオウイルスが,いったんポリオフリーを達成したアフリカ,アジア,ヨーロッパの国々へ,頻繁かつ広範な伝播を引き起こしている.さらに,ナイジェリアやインドのポリオ流行地では,2型ワクチン由来ポリオウイルス伝播が発生しており,一部地域における2型ポリオウイルスに対する集団免疫の低下が危惧されている.その一方,2009年には,北部ナイジェリアにおけるポリオ根絶活動指標の改善が報告されており,実際,2009-2010年にかけて,ナイジェリアの1型および3型野生株ポリオウイルス伝播は顕著に減少ししつつある.さらに,ハイリスク地域における追加接種活動の質を改善し,より簡便化するための効果的な手段として,Sabin 1 型と3型を含む二価経口生ポリオワクチンが2010年に導入された.2000-2009年の10年間,ポリオ症例数の上では顕著な減少は認められていないが,「世界ポリオ根絶の失われた10年」の間に得られた経験を十分に踏まえることが,世界ポリオ根絶計画を最終段階に進めるために必要とされる.