- 著者
-
太田 誠
- 出版者
- 社団法人日本産科婦人科学会
- 雑誌
- 日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.1, pp.73-82, 1985-01-01
客観的,連続的な胎動記録ができ,同時に胎児心拍数図が記録できる超音波ドブラ胎動計を用いて妊娠各期の胎動を記録し検討した.1)電子スキャンで認めた胎動は,胎動計記録と100%に一致し,胎動計記録の約90%が電子スキャン観察でも認められた.Mモードによる胎動記録に一致して胎動計記録が得られた.2)胎動バーストには,妊娠23週以降,胎児一過性頻脈の同時併発をみ,28〜3i週で42〜87%,36〜40週で91〜100%の併発率であった.バーストに伴う心拍数増加の振幅は,23〜38週で直線的に増大し,妊娠30週ではその平均値から約15bpmと推定された.単発信号では一過性頻脈の併発はなかった.3)胎児のしゃっくり様運動は妊娠24週から記録され,4分20秒〜17分持続し,25〜28cpmの規則的なスパイクが連続した.一過性頻脈の併発はなかった.4)母体の胎動自覚率は,記録振幅13mm以上の胎動では平均27.7%,胎動バーストでは平均67.7%であり,個人差は大であった.記録振幅10mm以下では,母体の自覚はなかった.5)妊娠初期では11週以降(CRL54mm以上)で胎動が記録された.6)日中の長時間の記録では,active phaseの胎動バーストの持続は,15秒以内,15秒〜1分,2分以上の3つに大別された.resting phaseの持続は10〜36分で,その出現は13時台と16時台に多く,resting phaseの発生間隔は24〜152分であった.7)日中の各時刻帯1時間あたりの記録振幅13mm以上の胎動数の最大値は2,860回,最小値は15回,平均値では差は少なかった.8)母体の昼食前後の胎動数の変化は,増加または減少の一定の傾向を認めなかった.今後の胎動評価において,胎児に個体差があることから,経時的な胎動観察が重要である.