著者
井澤 秀明 西澤 隆司 五十嵐 正雄
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.201-206, 1981

群馬県内の15の病医院を対象として昭和48年から52年までのRh_0(D)-型妊婦の抗Rh_0(D)抗体の産生率と児の予後とを追跡調査した.1.調査対象となつた15の病医院での5年間の出生児総数は55, 038名で, 県内全出生児数の36.4%に当る. この聞に来院したRh_0(D)一型妊婦は435名で, 血清中に抗Rh_0(D)抗体が検出されたのは20名(4.6%)であるが, 輸血歴のある3名を除くと17名(3.9%)であつた.2.輸血歴のたい17名の中で初回の妊娠時から検査Lていて抗体産生の時期を明らかにし得た者は6名で, 初回の妊娠3名(15%), 2回目の妊娠2名, 3回目の妊娠1名に, 妊娠中に初めて抗Rh_0(D)抗体の産生を認めた.3.妊娠経過中の抗体価を比較的頻回に検査した者の抗体価の変動を追跡し得た症例では, 妊娠20週以後に上昇し始め, 特に妊娠30週乃至40週の間に急激な上昇をみた症例が多く, 抗体価の上昇が妊娠前半に急激に上昇した症例はなかつた.又, 初妊婦よりも経妊婦又は経産婦の方が抗体偲の著明な上昇を認めた症例が目立つていた.更に輸血歴の既往が有つても妊娠経過中全く抗体価の変動をみない症例もあつた.4.妊娠中抗体の産生が認められなかつた児は総て無治療で退院しているが, 母血清中の抗体価が256倍未.満の児9例のうち3名は光線療法を受け, 6例は無治療であつた. 抗体価が256倍以上に上昇した11例では交換輸血を受けたのは9例で, 無治療例, 光線療法例各1例であつた.早産で死亡した1例を除くと総ての成熟児は後遺症たく生存している.今回の調査対象となつた症例のうちには, 高ビリルビン血症による胎内死亡や核黄痩による死亡を繰り返している例はなかつた.

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