- 著者
-
谷口,一郎
- 出版者
- 日本産科婦人科学会
- 雑誌
- 日本産科婦人科學會雜誌
- 巻号頁・発行日
- vol.34, no.10, 1982-10-01
子宮体癌は近年増加傾向にある.その早期診断には,子宮腔内より直接細胞を採取する細胞診が重要である.我々は当科外来患者138名(33〜77歳)にブラシ法の一変法であるEndocyte法と,増渕式吸引法を同時に施行し,比較検討した.また他施設での既知体癌患者8名に対して,Endocyteを使用し次の如き結論を得た.1)Endocyte法は吸引法より多量の内膜細胞が採取可能であった.2)挿入は吸引法に比較してやや困難な場合もあるが,従来のブラシ法に比較すると,はるかに容易であった.3)細胞採取時の出血量は大差なかった.4)子宮腔内に出血している場合やpyometraの場合は,Endocyte法の方が細胞を採取しやすかった.5)子宮頚部の細胞のcontaminationがEndocyteの方が少なかった.6)細胞採取時の疼痛の程度は,Endocyteの方がやや強かったが,鎮痛剤を必要とした症例はなかった.7)子宮体癌患者13例にEndocyteを施行したが,全例共細胞診陽性であった.以上の結果より,Endocyte法は,子宮内膜細胞診を施行する場合吸引法と同様に有用であり,またIUDの挿入器具と構造的に類似するため,一般婦人科医にも扱いやすいと思われる.