- 著者
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中野 波津巳
- 出版者
- 独立行政法人国立女性教育会館
- 雑誌
- 国立女性教育会館研究紀要
- 巻号頁・発行日
- vol.9, pp.107-114, 2005-08
1999年に男女共同参画社会基本法が施行され、男女共同参画を推進する動きが一気に加速すると思ったのも束の間、多くの自治体で男女共同参画推進条例の制定にクレームがつくなど、昨年頃からバックラッシュの動きが勢いを増している。また、男女平等を目指した法的整備が進んでも、人々の意識の中には依然としてジェンダーによる固定観念が根強く残っている。こうした状況の中で男女共同参画を着実に推進していくには、女性のエンパワーメントこそが重要な意味を持つと考える。本稿では、女性のエンパワーメントが社会を変える原動力となった事例として、鶴ヶ島市ひまわり会(以下「ひまわり会」と記述)の16年間の足跡を追う。埼玉県鶴ヶ島市で農業を生業とする女性たちのグループ「ひまわり会」は、1988年9月に会を結成して以来16年間にわたり、家族や地域にさまざまな影響を与えながら活動を続けてきた。農家の嫁としての苦労や悩みを打ち明け合うことから次第に関心を広げ、生産者と消費者との交流イベントに取り組んだり、審議会などの委員として公の場で発言の機会を得るなど活動の幅を着実に広げてきた。最近では、女性農業者の地位の確立や農業後継者を育てることを目指す「家族経営協定」の締結にも積極的に取り組んでいる。こうした「ひまわり会」のエンパワーメントの過程を踏まえた上で、「ひまわり会」と行政とのかかわりを検証しながら、女性のエンパワーメントのために行政が果たすべき役割について考察する。