著者
中村 晋
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー
巻号頁・発行日
vol.20, no.5, pp.361-364,414-41, 1971
被引用文献数
1

Pancreatin は散剤として, また合剤として錠剤中にも含まれ, 広く調剤に使用されるごくありふれた消化剤であるが, 著者は最近これによって惹起されたと考えられる職業性アレルギー症に1例を経験し, アレルギー学的検索を試みたのでその成績を報告した.症例は46才の男子, 某病院の薬局長, 1949年以来薬剤師として勤務しているが, 1955年より薬局調剤室で Pancreatin の調剤をすると鼻汁, くしゃみ, 呼吸困錠をきたし, 過去3回喘息発作をみたと訴えて最近われわれのAllergy Centreを訪れた.患者は休暇や出張で仕事から離れると調子が良いといい, 1960年 Festal 難を内服した時に著明な腹痛("腹が煮え返るような")をきたしたという.著明な末梢血好酸球増加はみられなかったが鼻汁中好酸球増加を認めた.Routine に行なう吸入性抗原液による皮内反応はすべて陰性であった.そこで無菌化した Pancreatin 溶液による scratch-patch test, 点鼻試験, 吸入誘発試験, PK反応を試みたところ陽性を呈した.そして pancreatin 液による皮内反応では著明な陽性反応があらわれ, 喘息発作, 結膜充血および蕁麻疹の如き全身症状を続発した.以上の病歴ならびにアレルギー学的検索成績から本症例は pancreatin により惹起された職業性アレルギー症と考えられた.著者は薬剤師や製薬会社の社員の間にも種々の職業性アレルギーが存在する可能性を指摘し, この問題を検討する必要性を強調した.

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