出版者
日本医療機器学会
雑誌
医科器械学 (ISSN:0385440X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.699-725, 2004-11-01
被引用文献数
1

今回の調査結果報告書は,滅菌業務が日常的に行われている1,400の施設を無作為に抽出して,約3ヵ月にわたる調査期間において32%の回収率で寄せられた結果をまとめたものである.円本における滅菌バリデーションの実態を把握し,日本医科器械学会から4年前に出された「医療現場における滅菌保証のガイドライン2000」の改訂に向けての基礎資料となるものである.アンケートの集計により,滅菌のバリデーションを実施している施設が23%に達することが明らかとなった.かなり高い実施率を示す結果となっているが,この数値はバリデーションの本質が正しく理解されずに,各種インジケータを使用した滅菌業務の日常的な管理が,あたかも滅菌バリデーションであると過大解釈されてアンケートに回答している可能性が伺える.滅菌バリデーションにおいては,各種滅菌法の変動要因を把握して,初期の目的どおりに装置が機能することを科学的に検証して確認する必要がある.したがって,医療施設での滅菌バリデーションでは,装置の確認,運転再現性の確認,滅菌性能の確認が主な内容となる.すなわち,据付時適格性確認(installation qualification:IQ),運転時適格性確認(operational qualification:OQ),稼働性能適格性確認(performance qualification:PQ)である.(1)据付時適格性確認(IQ)は,搬入設置された滅菌器が設計どおりに機能できるように正しく備え付けられていることを確認する行為である.蒸気滅菌器では電気,水蒸気,水,圧縮空気の供給状況と,蒸気排気,空気排気,排水等の設備が基本条件を満たしているかどうかを評価しなければならない.(2)運転時適格性確認(OQ)では,蒸気滅菌器の場合には,空気が十分排除されて減圧がなされているか,温度が規定どおりに上昇しているか,その変動は規定値以内に収まっているか,滅菌時間は設定どおりか,などを科学的に確認しなくてはならない.(3)稼働性能適格性確認(PQ)には物理的PQと微生物学的PQがある.前者は,たとえば温度センサーによりコールドポイント(最低温部)で実負荷のもとで測定する方法などであり,後者は,実際にその滅菌法に対して抵抗性のある微生物が死滅したかどうかを確認する行為が該当する.オーバーキル法,バイオバーゲン法,ハーフサイクル法などの方法が用いられている.現在検討されている「医療現場における滅菌保証のガイドライン2000」の改訂に向けて,それぞれの施設で実施可能な滅菌バリデーションであるかどうか,さらにメーカが行うべきことかなどを明確に区別して提示する必要がある.IQとOQはメーカが実施すべき項目といえる.PQにおいては,インジケータの使用基準の作成,テストパックの作り方や置き方の解説,Bowie&Dicktestを必須とするかどうかの検討,過酸化水素ガスプラズマ滅菌のバリデーションの追加,滅菌前の洗浄のバリデーションをどこまで追及するかなどについての検討も必要となってくる.また,滅菌バリデーションを実施した場合の問題点に対して,日常管理の中でどのように検証すべきかについても考えていかなくてはならない.これからの医療施設における滅菌業務において,さらに高い水準を維持するために,医療用工業滅菌と施設内滅菌が同一基準の安全性の確保と滅菌保証を行っていく必要がある.また,滅菌バリデーションの実施を広く啓蒙していくために,その実現に向けて今回のアンケート結果を踏まえた新しい「医療現場における滅菌保証のガイドライン」の改訂が期待される.

言及状況

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こんな論文どうですか? 滅菌保証としてのバリデーションに関わる実態調査 : 調査結果報告書([記載なし]),2004 http://id.CiNii.jp/KkCTL

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