著者
安部 清哉
出版者
日本語学会
雑誌
國語學 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.101-116, 2003-07-01

日本語方言の重層性を,関東を横切る方言境界線と河川湖沼沢池地形名の分布から考察し,方言境界線の成立要因を明らかにして,古い日本語の背景としてモンスーン・アジア(M.A.)領域の言語特徴を考慮する必要があることを述べた。全体としては次のことを指摘した。(1)河川名や湖沼沢池名には分布範囲の異なる新旧の相違がある。(2)その境界線は「奥東京湾-柏崎線」「柏崎-銚子構造線」「利根川」等の複合的自然境界による。(3)この境界をもつ方言分布は縄文時代以来直接的間接的にその影響を受けてきた。(4)河川名タニよりも古い分布としてナイがあり,それは東アジアに連続しM.A.領域にも周圏的に分布する。(5)M.A.領域内には類別詞など共通する言語特徴が認められる。(6)M.A.文化領域の形成は旧石器時代にまで溯り,言語だけでなく気候・文化人類学的諸特徴相互の関連性が極めて高く,文化人類学的にも注目すべき領域である。

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