著者
内間 直仁
出版者
日本語学会
雑誌
国語学 (ISSN:04913337)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.32-44, 2004-04

琉球宮古・八重山方言では, 古代日本語のワ行子音が[b]となる顕著な音韻現象がある。これは奄美諸島の一部, 沖縄本島北端の一部の方言にもみられる。この[b]について, 従来記述的な研究報告はなされていても, その成立についての考察はほとんどなされていない。この[b]の成立は, 宮古・八重山方言においては五母音>三母音, 奄美・沖縄方言においては五母音>三母音>五母音(新[o][e]の成立に伴う)という母音変化と密接に関わっていることを明らかにした。すなわちこれらの母音変化と連動して, 古代日本語のワ行子音も宮古・八重山では[w]>[b], 奄美・沖縄では[w]>[b][gw][g]>[w]の変化を起こしていることを, [b]の音声学的特徴や琉球方言における[b]とその変種音の分布状況及び[b]のあらわれる音環境も分析しながら明らかにした。

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