著者
山口 寿之
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.125, pp.277-295, 1982
被引用文献数
1

Balanus sendaicusは仙台付近に分布する中新世茂庭層から得られた殻の一部分の1つの楯板(scutum)に基づいて畑井, 増田, 野田(1976)により新種として記載された。その標本は仙台の斉藤報恩会博物館に保管されているはずだが, そこには見つけられなかった。その名前のもとに殻の他の部分, 背板(tergum)および周殻(shell wall), は記載されなかった。原産地標本(topotype)および畑井ら(1976)に図示された標本調査で, 畑井らがB. rostratusとして記載・図示した周殻はB. sendaicusに属す。それゆえ, 本論文では畑井らによって記載されなかった背板を含めてB. sendaicusを明確にする。B. sendaicusは畑井らの指摘のとうり既知の分類群から異なる。B. sendaicusは漸新世から更新世に地中海地域テーチス海に繁栄したde Alessandri (1906)の意味合いでの絶滅種B. concavusと近縁である。B. sendaicusは周殻の壁管(longitudinalまたはparietal tubes)に直交副隔壁(transverse septa)を持つことおよび楯板の特徴的な表面装飾によってB. concavusに代表される種群に属す。この種群に属す"4種"が東部太平洋に生息している(Newman, 1979)けれども, 大西洋・地中海地域からのB. concavus種群の消滅はPilsbry (1916)の指摘のようにミステリアスである。化石の日本のB. sendaicusは, 中新世に限られ, B. concavus種群の東アジアからの最初の化石記録となり, そしてテーチス海と東アジアの間のつながりの存在を指摘する。

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