- 著者
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大村 明雄
- 出版者
- 日本古生物学会 = Palaeontological Society of Japan
- 雑誌
- 日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
- 巻号頁・発行日
- vol.1984, no.135, pp.415-426, 1984
- 被引用文献数
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琉球弧の中でも西南琉球ブロック中のもっとも海溝側に位置する波照間島の琉球石灰岩について, その形成時代を明らかにするため, 74個の礁性サンゴ化石から<SUP>230</SUP>Th/<SUP>234</SUP>U年代値を求めた。その結果, 本島の琉球石灰岩は更新世後期の4回の高海水準期(おおよそ81, 000年と103, 000年前の2度の亜間氷期と, 128, 000年と207, 000年前の2回の間氷期)に形成されたことが明らかになった。本研究で得られた最古のものは, 300, 000<SUP>+</SUP>40, 000<SUB>-</SUB>31, 000年で, この年代値は, より以前の(深海底有孔虫酸素同位体比ステージ9に対比される)間氷期に現在の波照島の位置にすでにサンゴ礁が形成されていたことを示唆している。潮汐平底を構成している石灰岩から採集された5個のサンゴ化石は, いずれも10, 000年以若の年代(920±50年~6, 000±500年)を示した。すなわち, 現在島の周囲を縁取って発達している潮汐平底は, 過去数千年間にわたって形成されてきたものといえよう。このように, 波照間島の琉球石灰岩を, 西インド諸島のBarbaJos島, ニューギニアHuon半島や中部琉球ブロック中の喜界島などの更新統隆起サンゴ礁に対比することが可能になった。各段丘から採集されたサンゴ化石の年代測定結果にもとづき, Ota et al. (1982)によって8段に細分された海成段丘(T1~T8)のうち, 上位から2段目(T2)と下位の5段(T4~T8)は, 侵食面と考えられる。さらに, 彼らは地形学的手法によって, 各段丘形成時の旧汀線高度を求め, 本島が西方へ傾動していると結論した。今回, 最終間氷期に形成されたことが確証されたT3面の旧汀線高度と, 隆起運動の等速性および当時の古海水準を現在より6m高かったと仮定することにより, 本島の最大隆起速度は, おおよそ0.3m/1, 000年と計算される。以上の事実を考えあわせると, 波照間島は, 最終間氷期以降, 造構造的には圧縮場におかれてきたと思われる。