- 著者
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荒木 一視
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.45, no.4, pp.265-278, 1999-12-31
- 被引用文献数
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本研究の目的は, 日本経済再生の可能性, わけても農業を地域の産業構造の文脈から論じることである.その際の地域の産業構造の理解とは, 農業生産地域のみならず, 制さんから流通・消費に至る一連の体系から構成される地域間のシステムを念頭におくものである.すなわち, 少なくとも国家規模の分析スケールを想定するものである.このようなスケールの地域間のシステムから農業を検討するという立場は, これまで主流をなしていたわけではない.しかし, 国家的なスケールで農産物が流動する現代の農業を考える上では不可欠の立場と考える.その背景を研究対象の整理を通じて提示し, 1事例地域内の農業構造の分析, そこからえられる産地形成論, あるいは農業の再生論の限界に言及した.続いて, 地域間のシステムという見地からわが国の国家的スケールでの青果物流動の現状を示し, そこから農業再生の可能性についての展望を行った.農業の再生に関して, 農業地理学が貢献できるとすれば, ミクロスケールのみならずマクロスケールの農産物の地理学的検討も重要であることを喚起したい.あるいはそれが既存の農業地理学の枠外であるならば, この視点を「食料の地理学」として提起したい.