- 著者
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稲垣 稜
- 出版者
- 経済地理学会
- 雑誌
- 経済地理学年報 (ISSN:00045683)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.2, pp.23-43, 2002-06-30
- 被引用文献数
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2
本研究では,国勢調査・就業構造基本調査,及び愛知県春日井市に位置する高蔵寺ニュータウンにて実施したアンケート調査を利用し,大都市圏郊外に居住する若年者の人口学的特質,就業形態の多様化,及び通勤行動を関連づけることにより,1990年代以降の大都市圏郊外の雇用成長の性格を検討した,1990年代以降に労働市場への新規参入期を迎えた若年者は,親世代による郊外への居住地移動を反映して主に郊外に居住しており,彼らが就業年齢に達した1990年代には,郊外に居住する大量の若年者が労働市場へ参入することになった.時しもその時期はバブル経済が崩壊し,コスト削減のために企業が非正規労働力の積極的活用を進めた時期であった.アンケート調査によると,親と同居する場合,及び同居する兄弟姉妹に在学者がいない場合に非正規労働者,無業者になることが多いことが示された.郊外出身者の増加にともなう親と同居する若年者の増加,ならびに出生率の低下にともなう兄弟姉妹数の減少といった1990年代以降にみられる動向は,若年の非正規労働力化を進展させる条件になっているものとみられる.若年の非正規労働者の多くは郊外の自宅近隣で販売職・サービス職に就いている.郊外では,販売職・サービス職がバブル経済期よりもバブル経済崩壊後に就業者増加数を拡大させたが,これは郊外に居住する若年者の非正規労働力化による部分が大きく,性別にみると,新規学卒市場において不利な立場にある女性が果たした役割は大きい.1990年代以降の郊外における販売職・サービス職の雇用増加とは,郊外における若年人口規模の拡大傾向と,バブル経済崩壊にともなう非正規労働力化の進展が相まって生じてきたものと判断できる.