- 著者
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岡崎 博
- 出版者
- 日本植物病理學會
- 雑誌
- 日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.3, pp.314-320, 1975
- 被引用文献数
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コロジオン膜被覆スライドガラス上に<i>Fusarium oxysporum</i> f. <i>raphani</i>の厚膜胞子懸濁液を滴下してその発芽率を調べた。厚膜胞子はpH4.0∼7.0の範囲では90%前後の高い発芽率を示した。厚膜胞子は,塩類溶液中の密度が2×10<sup>4</sup>個/ml以下のときは90%以上の発芽率を示したが,9×10<sup>5</sup>個/ml以上になると発芽率は1%以下に低下した。厚膜胞子の密度が高いときに生じる発芽率の低下は塩類溶液にグルコースを添加すると回復し,その添加効果は0.1mM以上であらわれた。<br>気相の酸素濃度が5%以下になると,塩類溶液中における厚膜胞子の発芽は減少しはじめた。この酸素の影響は培地にグルコースを添加すると緩和された。しかし気相を窒素で完全に置換すると,厚膜胞子の発芽率は培地中のグルコースの有無にかかわらず著しく低下した。<br><i>Fusarium oxysporum</i> f. <i>raphani</i>の菌糸懸濁液を入れたペトリ皿の気相で厚膜胞子の発芽試験を行うとき,発芽培地として塩類溶液を用いると,発芽は著しく阻害された。一方,この発芽阻害はグルコースを添加した塩類溶液を用いると認められず,飢餓培養した菌糸を用いると増大し,菌糸懸濁液にグルコースを添加すると消失した。<br>以上の結果をもとに<i>Fusarium oxysporum</i> f. <i>raphani</i>の菌糸が産生する揮発性物質,およびそれらの産生におよぼす炭素源の濃度について論じた。