著者
柴田 博仁
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, 2004-01-01

本研究では,文章作成支援という問題を取り上げる.特に,論文や報告書,小説,エッセイなどの作成で見られるように,ある問題やテーマに対して関連する情報の収集と独自のアイディアが求められ,最終的には表現や構成を吟味したうえで文章としてまとめる活動を支援することを目的とする.このような文章作成は,問題が明確に定まらず,実践の中で問題を発見し,解決していくデザインプロセスの一種として考えることができる.また,その過程で生じる問題を解決するためには,これまでの概念空間から別の空間へとジャンプする創造的思考が求められる.本研究では,文章作成を「創造的デザイン」として捉え,これまでの創造的思考,デザインプロセス,文章作成に関する研究の成果をもとに,支援の方法論を探る.このような考えに基づき,文章作成に関わるさまざまな活動を一貫して支援する枠組みを提案し,統合的文章作成支援環境iWareを構築した.iWareは,おのおの独自の枠組みに基づいて構築した二つのサブシステムからなる.一つは文章の素材を集め,アイディアの生成を支援するiBox+であり,他方は収集,生成した素材やアイディアを整理し,文章にまとめあげることを支援するiWeaverである.実践的な利用の中で,本研究の枠組みは,日常的な情報収集活動と文章を構築する活動とをシームレスに支援し,文章の構造が定まらない試行錯誤的な状態から明確に構造化されるまでのスムーズな移行を可能とすることを示す.

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