著者
松田 晃一
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, 2005-01-01

近年のコンピュータとネットワーク技術の発達により,これまでの1対1のコミュニケーションだけでなく,遠隔地にいる多人数の人間が同時に同じ仮想環境(共有仮想環境)を介してコミュニケーションしたり,同じ経験を共有することが可能になってきた.このような環境は,従来のCSCWシステムとは異なり,ネットワーク上にユーザが留まれる「場」の創出を可能とし,その環境に都市や街のメタファを導入することで新しい社会性をもつ環境(仮想社会)の構築を可能とする.このような環境の中では,従来のCSCWシステムにおける特定の目的を達成するための単なる作業支援だけではなく,ユーザ間の自律的な社会的インタラクション,コミュニティ形成,創造的な知的活動など社会的活動の支援までもが可能になる.著者らは,従来の共有仮想環境に,その環境内で個人を支援する,自然言語でインタラクション可能な自律型パーソナルエージェントと社会的・環境的インフラストラクチャを導入することで社会性をもつ共有仮想環境(PAW^2)を構築し,インターネット上に公開し大規模仮想社会実験を行い,さまざまな側面から評価した.本研究は,このような仮想社会の構築に必要な基盤システムの設計とアーキテクチャ,それを用いて開発された仮想社会の設計とアーキテクチャ,インターネット上で数千人のユーザを用いた仮想社会PAW^2の評価に関するものである.最後に,今後の本研究領域における新しい研究分野となる,次世代の仮想社会「自己充足型仮想社会」の提言を行い,本研究の結果からその可能性について議論した.

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