著者
宮崎 賢太郎
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.77, no.2, pp.243-268, 2003-09-30

江戸幕府のキリシタン禁教によって、キリスト教邪教観は日本人の間に強烈に定着し、差別がなくなったのは戦後のことである。一方、キリスト教は明治以降、文明開化の象徴として、進んだもの、高級なものとして都市部のインテリ層を中心に受け入れられた。従来キリシタン研究に関しては、教義の問題、布教史、殉教史が中心であり、キリシタン民衆の日常生活にはほとんど触れられてこなかった。本稿では、伝来初期より潜伏時代を経て幕末にいたるキリシタン信徒、現存する長崎県下生月島のカタレキリシタン信徒の日常的な信仰生活を紹介する。結論として、改宗者の日常的信仰の姿から見えてくるのは、日本の神仏との相違を十分に認識して改宗したというよりは、天竺渡りの「力ある神」としてキリスト教を受けとめたということである。彼らの信仰の根底には、常に変わることのない呪術的な現世利益信仰が一貫して存在したということである。

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