- 著者
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沖田 瑞穂
- 出版者
- 日本宗教学会
- 雑誌
- 宗教研究 (ISSN:03873293)
- 巻号頁・発行日
- vol.77, no.3, pp.655-678, 2003-12-30
レヴィ=ストロースによれば、世界のあらゆる神話体系には、それぞれの神話体系を構成する神話や伝承の間に、「反復と変形の構造」が認められる。話の全体は同じ構造の繰り返しによって構成されているが、話の細部は一方が他方の正反対の形に変形されているという構造である。この構造はインド神話の領域にも見られると思われる。本稿ではこのことについて、叙事詩『マハーバーラタ』の以下の三つの神話伝承を主な題材として分析を試みた。(1)主筋の伝承における、ガーンダーリーとクンティーがそれぞれ百人と五人の息子を得る話、(2)第一巻の長大な挿話部分において、カドルーとヴィナターという二人の女神がそれぞれ蛇族と鳥王ガルダを生む神話、(3)第三巻の挿話における、サガラ王の二人の妻とその息子たちの伝承。その結果、これらの主筋と挿話の神話伝承は同一構造の反復と変形によって構成されており、物語上は関連性を持たないが、構造の点では密接な関係にあるという特徴が見られた。