- 著者
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清水 裕子
酒井 秀夫
- 出版者
- 一般社団法人日本森林学会
- 雑誌
- 日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
- 巻号頁・発行日
- vol.78, no.2, pp.113-118, 1996-05-16
- 被引用文献数
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下刈用作業服の素材として綿と麻を取り上げ, それぞれ半袖と長袖の下刈用作業服(上衣)を試作した。デザインは, 通気性や動作のしやすさを考慮して, 前あきで, オープンカラーとし, ゆとり量を大きくとり, 袖山を低くした。これらの作業服を着用して, 夏季に野外試験を行い, 下刈作業時の衣服内気候を測定するとともに, 着心地に関する調査を行った結果, 以下のようなことが明らかになった。1)晴の日の下刈作業における衣服内温度は, いずれの作業服も上腕部で最も高く, 次に背部であり, 胸部は最も低かった。2)衣服内湿度は首にタオルを巻いていなかった麻半袖の背部を除き, 100%RHに近い湿度になった。3)衣服への汗の吸収量は, 綿作業服着用時の方が大きい。4)着心地についてはいずれの作業服も動きやすく, 涼しく, 風通しがよい, とくに半袖は風通しがよく涼しいと評価された。5)作業服の接触感は, 長袖において肌に直接触れている肩の部分で, 綿では汗による体へのべとつきが示され, 麻ではちくちくするという物理的刺激が示された。6)素材の物理的特性と着用実験結果から, 素材としては, 麻の方が熱伝達性, 水分の吸収・放湿性, 強度の点で, 炎天下の下刈用作業服に適していると考えられる。7)下着の着用は汗の吸収と輻射熱の遮断において大きな効果があり, またかたい麻織物が直接皮膚に接触しないためにも, 作業服の下に下着を着用することが効果的と考えられる。