著者
清原 友也 徳重 陽山
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.7, pp.210-218, 1971-07-25
被引用文献数
37

九州一円のマツ枯死木から, 線虫の一種Bursaphelenchus sp.が普遍的に検出されることは既報のとおりである。本試験では, マツ生立木にBursaphelenchus sp.を接種してその影響を調べたのであるが, 接種木の多くが枯死し, 本線虫に強い加害性のあることが明らかになった。その概要はつぎのとおりである。1)マツ生立木に対し線虫を1本あたり約600,30,000,1,500,000頭の3段階で接種すると, 30,000頭以上で枯死が起こった。2)接種懸濁液中の線虫, Pestalotia菌および両者を取り除いた洗浄濾液を個々にマツに接種した結果, 線虫を含む接種液のみが強い加害性を示した。3)線虫をマツの一次枝, 主幹地際, 根株などの木質部内に有傷接種すると, 60〜100%の異常, 枯死が起こった。樹皮からの接種では, 無傷区は枯れず, 有傷区では10本中1本だけが枯れた。しかし, 根株の周囲に線虫培養円板を埋めたものは, 接種した5本すべてが枯死した。4)微害, 中害, 激害型の3林分で線虫を3月に接種すると, 激害型林分では異常木, 枯死木の発生時期が早く, 枯死率が高かったが, この傾向は6月接種区では認められなかった。5)月別の接種では, 2月接種区で50%, 3〜8月接種区で70〜100%の枯死が起こり, 9〜10月の接種では枯死はまだ起こっていない。夏期に線虫を接種されたマツの多くは15〜30日で樹脂滲出量が著しく低下し, 2〜3か月後に枯死した。なお, 接種時期の遅速にかかわりなく, マツの枯死は7月以後に起こった。6)本線虫はクロマツ, アカマツ, リュウキュウマツに対して強い加害性を示したが, テーダマツ, バンクスマツ, プンゲンスマツおよびスギ, ヒノキにはまったく加害性を示さなかった。
著者
岩川 治 高田 長武
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.11, pp.357-363, 1963-11-25

この研究は, 車両, とくに運材用トラックの荷台上での位置と, そこに生ずる振動加速度の変化との関係を調べたものである。調査はつぎの方法で行なわれた。1.測定路線 : Fig.1,Table 1で述べる林道の2路線2.測定車両 : Table 2で述べる4台のトラック3.使用計器 : 小型振動加速度計および電接時計4.計器の位置 : Fig.3に見られる(1)〜(6)の6ヵ所が選ばれた5.測定条件 : 走行速度一定(20 km/h), タイヤ圧(車両ごとに)一定, 空車走行以上により, 測定の結果つぎのことがわかった。(1)水平, 上下の振動加速度の値, g_H, g_Vは位置No.1の点で最も小さく, その位置から遠く離れるほど大きくなる。(2)その場合g_Hよりもg_Vの値の増大が著しい。(3)この関係は, 車両種が変わっても傾向的に同じである。以上から荷台上に積荷される荷物(木材)は偏心荷重になるものほど, それを支持するバネ, 車両各部の構造に対し大きな衝撃荷重として作用するものと考えられる。この衝撃荷重は, 静荷重の増大とともに, トラックの損耗を理解する上で重要である。なお, この試験の一部は, マッカラー奨学資金の援助によりなされたものである。
著者
大河内 勇 大川畑 修 倉品 伸子
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.125-129, 2001-05-16
被引用文献数
3

道路側溝への両生類の転落死は両生類減少の一因として問題とされている。それを防止するために, 簡易な後付けスロープ型脱出装置をつけた場合の効果, 脱出装置の改良方法を調べた。スロープ型脱出装置をつけた場合, アズマヒキガエルでは側溝からの脱出数が多くなるという効果がみられたが, ニホンアカガエルでは装置がなくともジャンプによる脱出が可能なため効果はわからなかった。脱出装置は, 一部の種とはいえ効果があるので, 道路側溝につけるべきである。移動力の弱いアズマヒキガエルの幼体を用いた脱出装置の改良実験では壁面の角度が30度以下になると, 壁面が乾燥条件でも全個体脱出できた。これらから, 100%脱出可能な側溝は, 角度が30度より浅いV字溝になることを示した。
著者
太田 明 冨山 善三 北川 始 古瀬 忠雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.321-325, 1987-08-25

Utsukushimatsu is one form of Japanese red pine (Pinus densiflora S. and Z.) growing only at Kosei-cho, Shiga Prefecture. The main characteristic distinguishing it from typical Japanese red pine is the occurrence of many stems of diameters similar to each other. Seedlings grown from seeds of native utsukushimatsu have many branches until 7-year-old. Twelve-year-old trees are classified into two types, the "many-stem" type and the "few-stem" type. The average number of stems of the former has been 12.6 and the later 2.0. The "many-stem" type also has characteristics similar to native utsukushimatsu other than the number of stems, such as the change of needle color in the winter season, the short length of needles, and the abnormal location of the female flowers. The proportion of the number of the "many-stem" type of the total trees fluctuated from 19% to 82% depending on the mother trees. These facts suggested that the characteristics of utsukushimatsu are inherited recessively.
著者
藤井 禧雄
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.1-5, 1969

二脚の台の上に置かれた角材を,さまざまの条件下で (Table 1参照)鋸手に支えられたチェンソーで玉切った。そしてその際チェンソーのハンドル部位に生ずる振動加速度 (<i>G</i>表承)を,非接着型加速度変換器を通して,おのおのが直角な三方向別に記録し,それらを分散分析法を用いて解析した。実験は二段階に分かれている。第1段階は,チェンソー自体の特性(その馬力数,原動力の種類)がチェンソーの振動におよぼす影響を考察するために,スティール (6馬力型),ホームライト (5馬力型),電動型 (1.35馬力)を用いて予備実験を行なった。そして次の点を明らかにした (Table 2参照)。<br> 1. チニンソーに生ずる振動は,チェンソーの馬力数や原動力の種類によって大きく支配されている。<br> 2. 切削時に比べれば低いけれども,しかし空転時ですでにかなり高い振動加速度が生じている。<br> 3. 左右切歯の各角度およびデップス量の不揃いは,振動加速度を増加させる。<br> 第2段階は主実験で,供試機としてホームライトZIPを用い, Table 1の因子を直交配列表L<sub>64</sub>に割付けて64のさまざまな切削条件下で玉切実験を行なった。その結果は次のとおりである。<br> 1. あらゆる切削条件を通じての平均振動加速度は8.4<i>G</i>であり,最大値は12.9<i>G</i>, 最小値は5.1<i>G</i>であった。この平均値を方向別に示すと, <i>C<sub>〓</sub></i>:<i>P</i>.:<i>C<sub>〓</sub></i>=2.9<i>G</i>:4.0<i>G</i>:6.7<i>G</i>であった。<br> 2. 角材の木口幅,デップス量,樹種,エンジンの回転数,交互作用角度<i>i</i>×回転数は1%の危険率で有意であったが,最も興味のあった角度β, <i>i</i>およびその交互作用は有意でなく,他の因子 に比べればチェンソーの振動にさしたる影響を与えるものではないことが明らかになった。<br> 3. しかし,尚角度の16の組み合わせごとの振動加速度を見ると, β=55°, <i>i</i>=5°の場合の7.5<i>G</i>から, β=85°, <i>i</i>=50°の9.8<i>G</i>まで2.3<i>G</i>の差が現われた (Fig. 2参照)。<br> したがって結論としていえば,チェンソーに生ずる振動の大部分は両角度以外の要因に影響されるものであるが,チェンソーの稼動時の振動をより少なくするためには,均一な,しかも適正な角度とデップス量を保持することも必要であるといえる。
著者
池田 茂
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.192-195, 1955

鳥取県岩美郡,鳥取市,及び気高郡内の海岸砂丘地における被覆植物並びに海岸砂防造林木(幼令木)の寄生菌について調査研究したが,要約すればつぎの通りである。<br> (1) 被害被覆植物<br> コウボウムギ,ハマゴウ,ハマボウフウ,イヌムギ,<br> スナビキソウ,ケカモノハシ,ハマニガナ,ナデシコ,<br> ハマヒルガオ,ウンラン,オオ分マツヨイグサ,アキノキリンソウ,<br> トメムカシヨモギ。<br> 被害造林木(幼令)<br> ニセアカシャ,ポプラ。<br> (2) 見出された病原菌<br> <i>Alternaria, Macrosporium, Diplodia, Phyllosticla, Botrytis, Bacterium</i>.<br> (3)病原菌で最も多いのはAlternaia で Macroporium や Diplodia, 細菌類がこれに次いでいる。また原因不明(生理病)の病害もかなり多い。
著者
小林 政広 小野寺 真一 加藤 正樹
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.287-294, 2000-08-16
参考文献数
22
被引用文献数
6

年間を通じて地下水面が存在する平地林において, ヒノキ樹幹近傍の土層中のマトリックポテンシャルの測定を行い, 雨水浸透過程における樹木の存在の影響を, 土壌の乾湿条件と降雨条件との関係から検討した。湿潤な先行水分条件下では, 樹幹流として供給された多量の雨水が鉛直下方へ集中的に浸透し, この雨水は樹幹直下の地下水をかん養した。乾燥した先行水分条件下では, 樹幹流による集中的な雨水インプットが生じても, 雨水の大部分は樹木根系の吸水による土湿不足を解消することに消費され, 樹幹直下における集中的な浸透は発生せず, 樹幹から離れた部分でのみ地下水がかん養された。また, 湿潤時, 乾燥時ともに特定の場所においてバイパス流の発生によると考えられる局所的なマトリックポテンシャルの上昇が観測された。このようなバイパス流は, 総降水量が多く強度の強い降雨イベントで発生しやすい傾向が認められた。しかし, 土層が乾燥しているときには, より少ない雨で発生する傾向が認められ, これは表層土壌の撥水性のためと考えられる。
著者
丸山 エミリオ 石井 克明 斎藤 明 右田 一雄
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.329-331, 1989-08-01
被引用文献数
2

Multiple shoots were induced by shoot-tip cultures of 5-month old juvenile seedlings of Cedrela odoraia L. on woody-plant medium supplemented with 6-benzylamino purine (BAP). A small concentration of BAP (0.2mg/l) was suitable for shoot proliferation and their later elongation. Large rooting percentages (90%) were obtained on half-strength amounts of the same initial medium containing low levels of indole-3-butyric acid (IBA) and naphthaleneacetic acid (NAA) (IBA 0.5mg/l and NAA 0.05mg/l) . Rooted shoots were transferred to perlite substratum for root development and further plantlet growth.
著者
谷脇 徹 興津 真行 岸 洋一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.158-163, 2004-05-16
被引用文献数
1

マツノマダラカミキリの羽化脱出頭数を野外網室と25°C恒温条件の恒温室で0,4,8,12,16,20時の4時間ごとに調査した。環境条件が変動しない恒温室では,羽化脱出のピーク時間帯はみられなかった。野外網室では8〜12時と16〜20時にピークがみられた。羽化脱出頭数を目的変数,気温,降水量,日照時間を説明変数とした重回帰分析により,8〜12時の羽化脱出は過度に高い気温,過度に多い日照,降水に抑制され,16〜20時の羽化脱出は日中から日没頃にかけての気温が高いと促進されると考えられた。気温は羽化脱出の日周期性に最も影響する気象要因であると推察された。羽化脱出頭数の最多時間帯と次に多い時間帯の組み合わせには5パターンがみられ,気温条件により異なった。野外における羽化脱出の日周期性には,内的要因である羽化脱出リズムの寄与程度は小さく,外的要因である気温を主とする気象要因の寄与程度が大きいと考えられた。
著者
山本 千秋
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.311-319, 1981-09-25

ローソンヒノキを雌親とし, サワラ, ヒノキおよびヌマヒノキを雄親とする種間交雑をおこない, 球果, タネおよび苗木のできかたの違いから, 用いた樹種間の交雑の可能性を検討した。結果率, 1球果あたりのタネ数および真正発芽率については, 種内他家交雑と各種間交雑との間に差異はなかった。タネの充実率は, ローソンヒノキ×サワラが雌親の種内他家交雑の4分の1から半分という値を示した。これは, 従来のヒノキ属の種間交雑としては高い値である。ついで, ローソンヒノキ×ヒノキが比較的高かったが, ローソンヒノキ×ヌマヒノキはほぼ完全な交雑不稔性を示した。結果率, 1球果あたりタネ数および充実率は交雑年度間に差があり, 結果率をのぞく他の2形質は雌親間にも差がある傾向が認められた。成苗率は, ローソンヒノキ×ヒノキで相対的に高い値を示したが, ローソンヒノキ×サワラ苗では, 発芽個体の85%以上が黄子(致死)であったため最も低かった。総合的にみて, 雑種の作出が相対的に容易な組合せはローソンヒノキ×ヒノキであると判断された。
著者
佐藤 姚子 関谷 敦 浅輪 和孝
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.77, no.4, pp.353-357, 1995-07-01
被引用文献数
3

ヒラタケの菌床栽培において、培地中に添加した殺菌剤、チアベンダゾール(TBZ)の子実体による吸収について調査した。試験区は対照区のほか、それぞれの培地中に常用量(1区)、その10倍量(2区)そして50倍量(3区)のTBZを添加した。これらの培地でヒラタケを栽培し、2回にわたり発生した子実体を採取した。子実体試料のほか菌掻き時に採取した菌糸体および培地についても残留分析を行った。分析は農薬登録保留基準ハンドブック等に従い抽出、精製後、螢光検出器付きの高速液体クロマトグラフで定量した。その結果、TBZを添加した区で発生した子実体試料のすべてにおいてTBZが検出されたが、その検出値は常用量区においては、環境庁による野菜(きのこ類を含む)の農薬登録保留基準値を超えなかった。また、子実体での検出量は一次発生と二次発生とに大きな差はなかったが、柄部での検出量は傘部の2〜4倍量であった。一方、採取した子実体には2区では若干の、3区ではかなりの、柄部の短小化や傘部の変形等の品質低下と収量の減少が見られた。
著者
小岩 俊行
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.1, pp.9-15, 2002-02-16
被引用文献数
2

日林誌84:9〜15,2002カラマツ根株心腐病菌の生態を明らかにするために,36〜41年生の3林分で腐朽伐根調査を行った。調査林分では,カイメンタケとハナビラタケが病原菌として多く分離された。病原菌の子実体は梅雨期から初秋まで発生し,胞子の飛散は比較的長期間にわたると推察された。腐朽伐根の掘取り調査を行ったところ,腐朽伐根には約10本の主根がみられ,そのうち1〜2本に侵入口となった傷がみられた。侵入口の種類は,5タイプに分けられ,開口・大型の傷,根切れ・根腐れタイプが多かった。侵入口の形成部位は根株と主根が大半を占め,いずれの場合も深さ30cm以内の浅い位置であった。侵入口の年輪調査によって,病原菌の侵入時期は,樹齢7年〜31年生と推察された。侵入口となった伐根の傷は,石レキあるいは風が原因と推察された。
著者
佐倉 詔夫 沼田 真
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.371-380, 1980
被引用文献数
6 14

房総半島東南部のスギ幼齢造林地に下刈<br>区(毎年1回刈り)と放置区を設け,伐採後5年間の群落の動きを調べた。群落の解析には種類組成,生活型組成,遷移度(DS)などにより比較検討し,それらと植栽木の成長との関係についても論じた。種類組成および生活型組成から両区ともに遷移は進行しており,雌行速度は放置区のほうが下刈区よりもかなり進んでいた。これらのことから, DS=[(∑d・l)/n]・uの優占度dの4通りの算出法, (1) SDR (積算優占度), (2) SDR<sup>*</sup> (多区間積算優占度), (3) MDR (乗算優占度;〓×〓), (4) MDR<sup>*</sup> (多区間乗算優占度)のなかで (1) 式が,群落の動向を表現するのにもっともよく適合していた。極相指数<i>c</i>を入れるかいれないかでDSの算出式がちがうが,木本植物が量的に非常に多い初期造林地においても,両者のDSは傾向がよく一致していた。