- 著者
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土井 晃一
佐川 浩彦
田中 英彦
- 雑誌
- 全国大会講演論文集
- 巻号頁・発行日
- vol.39, pp.610-611, 1989-10-16
自然言詔理解を計算機上で行うためには、単語のニュアンスの問題を含んだ言外の意味の解析、状況理解、文脈理解、話者の認識の仕方の解析などが必要となる。我々は隠喩理解という範囲内でこれらを取り扱う。隠喩理解によって単語の新しい意味や新単語の意味の解析が可能になる。隠喩理解では連想網の実現が普通の文の理解よりも重要である。本論文では、隠喩理解における連想網の実現をニューラルネットワークで行う方法を提案する。我々は文を命題に分解して、命題単位でニューラルネットワークの各ノードに入力する。これによりネットワークの簡略化、収束の早さ、検索範囲の狭小化ができる。我々の隠喩理解モデルは相互作用説に基づいている。相互作用説によると、隠喩ではたとえる語とたとえられる語とがお互いに影響しあい、意味を変化させる。例えば「人間は狼である」という文では、「人間」も「狼」もその互いの意味が変化し、「残酷である」あるいは「孤独である」といった意味を帯びるようになる。ニューラルネットワークを使うことにより、このような単語の意味の変化を扱うことができる。さらに意味の変化を学習させることもできる。心理学の混合理論によると、(1)多義個所に至ると、聞きては複数の解釈を算出する。(2)その中から、文脈を利用して最適の解釈を選ぼうとする.(3)文が終わるまでに多義性が解消しなかった時にも、一つを選びそれに固執する。(4)選んだ解釈が後続の文脈に合わない時には、前の節の表層構造を想起し直して、新しい解釈を算出しようとする。となる。我々は混合理論に基づいた隠喩理解モデルを提案する。すなわち(1)の各々の解釈を別のニューロンに割り当て、ニューロンの活性値の大小により、優先順位をつけ、またさらに前の文章によって特定のニューロンのバイアス値を上げることにより、混合理論を実現する。