- 著者
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玉利 祐三
- 出版者
- 公益社団法人日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.48, no.4, pp.435-440, 1999-04-05
- 被引用文献数
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3
微量リチウムの生体必須性が指摘されるなかで, リチウムが内分泌器官と関連していることが論議されている. 本研究では, 乳児のリチウム摂取量を把握するために, 乳児用調製粉乳中のリチウムを原子吸光分光光度計を用いるフレーム分析により定量する方法を検討した. 試料を硝酸・過塩素酸により加熱分解し, 測定溶液を0.1mol/l塩酸酸性とした. 共存する高濃度のナトリウム及びカリウムの影響なしにリチウムが定量できることが分かった. 本法を市販の乳児用調製粉乳16試料に適用したところ, 新生児用では106±13ng/g(p<0.05), 離乳期用では178±42ng/g(P<0.05)となり, アレルギー疾患等の特殊粉乳では118±10ng/g(P<0,05)であった. これらの粉乳中のリチウムの起源は, 含まれる他の成分との濃度相関より, 粉乳に添加されている無機化学薬品中の不純物と推定された. また, 乳児の1日当たりのリチウムの平均摂取量は, 一般の乳児用調製粉乳では12μg, フォローアップミルクでは20μgと算出できた.