著者
植野 研
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 = Journal of Japanese Society for Artificial Intelligence (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, 2006-01-01

演奏家や体操選手などの技芸実践者は, 長い年月をかけて高度な運動スキルを獲得し, 通常は成し遂げることのできない技を実演することができる.しかしながら, 多大な労力と時間をかけて磨き上げた技芸スキルは, 一般に, 個人差や筋骨格の冗長性・流派などの違いから, 言葉で説明することが困難であり, これを正しく理解することが困難であることが知られている.本研究では, このような身体知の構築問題に対し, 身体制御のタイミングに着目し, 高度なスキルをピークタイングシナジー(PTS)としてモデル化する方法を提案する.PTSとは, 身体各部のタイミングの協調制御に関する動作一貫性制約で, 運動タスクにおいて遵守すべき身体知のことである.次に, このPTSを, 身体計測データから自動構築するアルゴリズムPRESTO (Phasic Relation Extraction for Skill Training and Optimization)を提案する.PRESTOは, 多角形近似を用いて波形の変化ピークとその時間ずれを特徴点とし, 時系列マイニングによりタイミングの法則性を導き出す.本方法により, 多変量時系列波形から身体各部の連鎖動作を点と線で捉えるPTSのモデル化が可能となる.本論文では, チェロ演奏における運弓動作をとりあげ, 計測データからPTSを構築する検証実験を行った.この検証実験により, 熟練者に共通する共通スキル, 特定の熟練者に特化した個性スキルをモデル化でき, 解釈可能な身体知を構築することを確認した.技芸スキル教育におけるスキル解析の一つの道具立てを提供することができ, 技芸スキル理解における足がかりをつけることができた点で, 本研究は大きな意義をもっていると考えられる.

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