- 著者
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矢野 孝雄
- 出版者
- 日本地質学会
- 雑誌
- 地質学論集 (ISSN:03858545)
- 巻号頁・発行日
- no.34, pp.155-170, 1990-03-30
北部フォッサマグナのグリーンタフ堆積盆地は, NNE-SSW方向に伸長し, 南東側の複背斜(筑摩帯)と北西側の複向斜(水内帯)に区分される。筑摩帯に軸をもつ南東フェルゲンツの広域的な曲隆運動によって盆地の伸長方向に連なるいくつかの大規模なドームが形成され, 下部中新統のグリーンタフやそれに貫入した石英閃緑岩が広く露出した。グリーンタフと中部中新統の細粒砕屑岩との境界部を剥離層として, より上位の地層群は北西へ向かって重力滑動し, 短波長の非調和褶曲群を形成した。水内帯では, 曲隆にともなうアンチセチックな基盤断層運動と被覆層の北西への重力滑動との相互作用の結果, 基盤断層群に沿うchevron型の背斜-断層とそれらの間の幅広いcurvilinearな向斜群とが交互に並走する複雑な複向斜構造が形成された。