著者
宮下 純夫 新井 孝志 長橋 徹
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.47, pp.307-323, 1997-04-24
被引用文献数
17

北海道中央部を構成する日高帯には, 周囲の砂泥質堆積岩と同時期に形成された現地性緑色岩が多数分布している。これらは, 日高帯西縁のイドンナップ帯, 日高帯西部, 日高帯東部の3帯の緑色岩に区分される。年代は, イドンナップ帯のものが白亜紀中頃, 日高帯西部は後期白亜紀後半, 日高帯東部は古第三紀暁新世-始新世と推定される。緑色岩の全岩組成はいずれもN-MORBの特徴を示す。これらは, イドンナップ帯においてはユーラシアプレートとイザナギ-クラプレートとの洩れ型トランスフォーム境界, もしくはイザナギ-クラ海嶺, 日高帯西部については沈み込み境界に対して高角な海洋プレート内の洩れ型トランスフォーム断層, 日高帯東部についてはクラ-太平洋海嶺に由来すると推定される。日高帯は, 後期白亜紀後半から古第三紀にかけて海嶺の多重衝突を経験した特異な付加体で, 日高火成・変成作用の発生によりこの付加体は大陸性地殻へと転化した。これは, 海嶺の相次ぐ衝突による付加体深部の異常な温度上昇, 大量の陸源砕屑物の供給による付加体の急激な成長, 東側から古千島弧が接近してきたなどの複合によっていると考えられる。
著者
前田 晴良
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.131-140, 1999-12-27
被引用文献数
1
著者
岡田 篤正
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.18, pp.79-108, 1980-03-30
被引用文献数
11

中央構造線はとくに紀伊中央部以西において各種の断層地形を伴い,右ずれ変位成分が卓越した主要活断層系を形成している。この活断層運動は二重弧の形成と関連して鮮新世最末期以来始まり,更新世中期以後激化するようになった。第四紀後期の断層運動は,場所による相違はあるものの,ほぼ累進的ないし徐々に加速するような変位速度で繰返し行われてきた。第四紀後期の右ずれ平均速度は四国中部から四国東部で1,000年につき5-10m,紀伊西部および四国西部で同じく数m,他地域ではより小さい値である。垂直変位は四国中央部の石鎚断層崖で最大1,500mに達し,1,000年につき0.8mに及ぶ平均速度で同様に累進的ないし加速的に行われてきた。水平変位に隋伴したいくつかのオーダーの波曲状変形が中央構造線活断層系の両側に認められるので,垂直変位の向きと量は各地形区で大いに異なる。中央構造線活断層系に沿う,このような様式の断層運動は第四紀を通して,西北西-東南東方向の広域水平圧縮のもとで形成されてきた。
著者
藤田 和夫
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.18, pp.129-153, 1980-03-30
被引用文献数
14

1)第四紀,とくに更新世中期以降に,中央構造線に沿って,右横ずれ断層運動が認められるが,それは紀伊半島中部以西に限られている(Fig.2)。2)活断層・活褶曲系から推定される第四紀応力場をFig.4に示す。九州を除き本州・四国は,第四紀を通じて水平圧縮の場におかれてきたとみられるが,これは60年間の一等三角点の再測量結果に基づく変位状態(Fig.9)や発震機構の研究からも支持される。3)上記造構応力場で形成された構造帯をFigs.4・8に示す。これらは,日本海溝に平行な東北日本の構造帯(Tpa系)と,南海トラフに平行な西南日本の構造帯(Tph系)に大別できるが,伊豆半島周辺と中部・近畿地方内帯と九州中部に特異性が認められる。Tpa・Tph系ともに日本海側に褶曲帯にもち,造構応力の集中を示し,かつ,太平洋・四国海盆との間に撓曲性の基盤褶曲(基盤波状変形)がみられるにもかかわらず,日本海盆の安定性の著しいことは,第四紀テクトニクスを考える限りにおいては,日本海側の海盆を固定し,太平洋プレートとフィリピン海プレートとの間における圧縮のテクトニクスとして,日本列島を考察することが許される(Fig.7)。4)太平洋プレートのサブダクションによって, 東北日本の地殻に発生した造構圧縮応力は,秋田-新潟油田褶曲帯に集中してきたとみられるが,東北日本と西南日本の基盤岩が最も近接する北部フォッサ・マグナの部分では中部地方に伝達される。この部分は中部傾動地塊と称されるようにゆるやかな波状変形を伴う(Fig.3)大傾動運動と,Tpa7. 8の共役横ずれ断層運動によって,側方短縮を行っているが,それだけでは十分ではなく,西側の近畿三角地域に,造構応力を伝達して,比良山地・近江盆地の間に著しい歪み帯をつくった(Tpa X)。そしてさらにその余力は丹波帯に及び, 山崎断層を含むTPh11帯をつくり, ほぼ減衰しているとみられる。5)このようなTpa帯の消滅に代って,それ以西では,四国・中国にかけて, フィリピン海プレートの影響とみられるTph帯が顕著になる。その主圧縮応力線はMTLに対して,やや西にふれているので,この古傷に沿って,外帯を西へドライブすることを可能にする。これに対して内帯の西進運動は,近畿三角地域の西側で減衰してしまうために,中央構造線に沿って,相対的に右横ずれ運動が発生することになった(Fig.10)。6)南部フォッサ・マグナを通じての圧縮応力は,中央構造線を越えて,赤石・伊那山地を一つの地境として西に傾動させながら,木曽山地と伊那盆地との間にTry Iを発生させた。この帯の延長は,北側の美濃・丹波の中・古生層帯からくるTpa帯と交差構造をつくりながら猿投帯(Try 2),伊賀・上野帯(Try 3)をへて大阪盆地南部に達する。そしてこれらと京都盆地から奈良をへて南下するTry IV帯とが中央構造線と合するあたりから西へ横ずれが始まることは,それ以東では中央構造線よりも,これら領家帯中の構造帯に歪みが集中してきたことを物語っている(Fig.8)。7)花崗岩質の領家帯は,南北両側の古期岩体にはさまれて,それらの異なる運動を調節するシアー帯の役割りを果している。北側の有馬-高槻構造線に沿っても右ずれ運動がみられ,それと南側のMTLとの間にはさまれている大阪盆地の形状は,その変形機構を表現しているといえる。
著者
小林 巌雄 立石 雅昭
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.37, pp.53-70, 1992-03-15
被引用文献数
8

新生代の新潟地域に分布する新第三系〜下部更新統の層序の資料を整理し, 対比を再検討した。これらの資料に加えて, 堆積相・化石相に基づき, 8つの時代の古地理図を描き, 古環境の概略を論じた。1. 前期中新世(18 Ma)の三川期:佐渡・岩船-津川地域で陥没盆地として発生した陸上の堆積盆に主に安山岩〜流紋岩の火砕岩類と砕屑岩類が堆積した。冷涼な気候であった。2. 前期/中期中新世(16-15 Ma)の津川-七谷期:著しい海進が広域に起こり, 暖流で洗われた多島海の海域が出現した。気候は温暖となり, 暖流系の各種生物群が生息した。後半に下部浅海ないし半深海へと変わった。3. 中期中新世の中頃(14-13 Ma)とその後半(11-9 Ma)の寺泊期:海が深くかつ拡大し, 温帯水域の海洋へと推移した。当時深海下にあった頸城地域に広大な海底扇状地が成長し, 佐渡〜新潟油田地域の北部では珪藻質軟泥が厚く堆積した。さらに, 玄武岩質の海底火山が佐渡地域などで噴出した。4. 後期中新世(7 Ma)の椎谷期:堆積盆の東側に当たる脊梁地域および海域全体に起きた大きな変動は, 古海洋に様ざまな変化をもたらした。地球規模の変動もこの時代に起こり, その影響もうけて海洋・陸上生物群が変化した。とくに, 北北東-南南西方向のトラフが成長し, 東側がらもたらされた粗粒堆積物で埋積された。5. 前期鮮新世(4 Ma)の西山期前半:脊梁山地側の隆起が進行したが, 一方海盆は再び拡大し, 暖流が流入する縁海としての日本海が顕在化した。海底の火山活動が活発化した地域もあった。6. 後期鮮新世/前期更新世初頭(3-1.5 Ma)の西山期後半〜灰爪期前半:東側の隆起と南側の海退が急速に進行し, 陸地が広く現れた。寒流の影響も受けはじめ。南方系の生物群とともに北方系の生物群が渡来した。海底の一部が隆起帯を形成したり, 佐渡・弥彦地域などでは陸地が出現した。7. 前期更新世(1 Ma)の灰爪期後半:新潟堆積盆地の中部・現在の日本海域を除いて, 新生代の堆積盆が陸化し, 扇状地や海岸平野が出現した。海水準変動による海進と海退が繰り返され, 暖期には南方系の海棲動物が北上した。
著者
石川 浩次 溝口 昭二 大鹿 明文
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.51, pp.52-66, 1998-03-24
参考文献数
7
被引用文献数
1

1995年兵庫県南部地震は六甲山南麓の平野市街地の建築物に多大の被害をもたらした。筆者らは, 地震発生直後から建築物の被害調査を行い, 道路に囲まれた区域を調査単位として建物の倒壊率を求め, 気象庁震度階(JMA)を用いてその結果を震度(被害度)分布として表示した。この内, 木造家屋倒壊率50%以上で且つ鉄筋コンクリート建物の倒壊が多い区域を超震度7として表示した。その結果, 震度6以上の被害は, 幅1.5〜2.0 kmで, 神戸市から西宮市に到る長さ25 kmにわたって帯状(いわゆる"震災の帯"と称された)に分布し, 震度7以上の被害は, 神戸市長田区の後背低地, 中央区の三宮駅付近の旧生田川流域周辺及び東灘区〜灘区の住吉川, 石屋川流域の緩扇状地分布域に島状に分布することが分った。一方, 山側の丘陵地, 段丘や海岸平野の沖積低地では震度5で被害は小さかった。また, この"震災の帯"の中で, 大阪層群が分布する丘陵地に近いJR元町駅付近や, 現生田川流域付近の扇状地では被害は小さい傾向にあった。
著者
村田 正文 大上 和良 蟹沢 聰史 永広 昌之
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.21, pp.245-259, 1982-04
被引用文献数
4

北上山地における古期花崗岩である氷上花崗岩類と,シルル系川内層は密接な関連をもって分布する。筆者ら(村田ら,1974:OKAMI&MURATA,1975)は,大船渡市日頃市地域の資料に基づき,氷上花崗岩類の少くともその一部"大野型花崗岩"がシルル系川内層の基盤を構成することを指摘してきた。また近年,川村(1980)により気仙郡住田町下有住奥火ノ土で,中井ら(1979MS)により同町上有住八日町で,氷上花崗岩類に属する小岩体とシルル系の不整合関係が指摘された。花崗岩とその上位に重なるシルル系基底部との間に,小規模な滑動面をもづくさやみ沢"と異なり,八日町ではアーコーズ砂岩が,奥火ノ土では,数センチメートル以下のラテライト様泥質岩をへだてて溶結凝灰岩が,何らの破断面もなく直接に花崗岩を覆う。シルル系川内層の基底相の1つである礫質アーコース砂岩は,八日町・奥火ノ土両地区にも発達し,その堆積岩々石学的な検討を行った。八日町地区のものは,日頃市地区のものと類似しアーコース砂岩であるが,奥火ノ土のものは,下位の火山岩・火山砕屑岩々片を含み不純アーコース砂岩である。粒度組成・鉱物組成からみて,日頃市地区のものと同様花崗岩風化物源で,原地性に近い堆積物であることを示している。また,数メートル以下の砂岩中での,粒度・鉱物組成の垂直変化は,その間の風化作用の進行状況を反映している。野沢ら(1975),許(1976),吉田ら(1981MS)によって指摘された,"氷上花崗岩の古生界各層への貫入"についても筆者らの見解を示した。層位学・堆積学的な諸事実により,氷上花崗岩類がシルル系川内層の基盤を構成することは,より一層確実になったことを主張する。
著者
佐藤 時幸 高山 俊昭
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.30, pp.205-217, 1988-04-25
被引用文献数
16

Twelve calcareous nannofossil biohorizons were recognized in the Quaternary sequences at six sites drilled in the Northeast Atlantic Oeean during DSDP-IPOD Leg 94. Correlation of these biohorizons with the magnetostratigraphy was also established for the same cores, and ages of all these biohorizons were estimated by interpolation between magnetic reversals (TAKAYAMA and SATO, 1987). The calcareous nannofossil assemblages of the Quaternary sequences distributed in the Oga Peninsula, Akita and Niigata 0il fields, Kanazawa area and the Boso Peninsula were studied. The most of these calcareous nannofossil biohorizons abovementioned were detected in these sequences. We clarified the relationships of coc-colith bio- and magnetostratigraphy and radiometric age assignments of the sediments in these areas and demonstrated the usefulness of nannofossils as biostratigraphic indicators.
著者
飯島 静男 大河原 恵子 大崎 小夜子 神沢 憲治 木崎 喜雄 久保 誠二 黒岩 繁 篠原 婦美江 関口 孝 高橋 武夫 田島 順子 玉田 淳子 角田 寛子 中村 庄八 服部 幸雄 武藤 斉 村山 昭夫 矢島 博 高島 和美 田中 淳子 萩原 哲 堀沢 勝
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.13, pp.251-260, 1976-12-30
被引用文献数
1

The Green tuff formations are widely distributed in the southern Joetsu district, and are divided into two groups, namely the Sarugakyo group and the Minakami group. The former overlies the latter unconformably. The area studied is surrounded by the River Akaya-gawa, the River Sukawa-gawa and the River Nishi-kawa, of which the latter two are the tributaries of the former. In this area the Sarugakyo group and the welded tuff formation with some related intrusive bodies are extensive. The Sarugakyo group is overlain unconformably by the welded tuff formation, and is divided, in descending order, into the following formations: Daido formation, Kassezawa formation, Hara formation, Akaya formation. The relation between each formation of the Sarugakyo group, generally, is conformable, but partial unconformity can be observed between the Hara formation and the Kassezawa formation. The structure of the Sarugakyo group is generally monoclinic with a NWW-SEE strike and low-angle dips toward SE. The Sarugakyo group is considered, from fossils, to belong to the middle Miocene. Some intrusive bodies, such as the Izumi-yama andesite, the Kasse andesite, the Amami-yama andesite, porphyrite and quartz diorite, are found in this area.
著者
鈴木 正男 鎮西 清高
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.8, pp.173-182, 1973-03-31

黒曜石は,ガラス質であるから,フィッション・トラック法による年代測定の試料として,実験操作,計数操作が容易で測定しやすい試料の一つである。これまで当研究室で得られた測定値の多くは,K-Ar法による測定値とよい一致を示す(KANEOKA and SUZUKI, 1970)けれども,中には,他の地質学的データと矛盾する値も測定されている。このような測定値の得られた試料は,黒曜石噴出後の熱的影響あるいは二次的影響が考えられる(KANEOKA and SUZUKI, 1970)。今回,新潟油田地帯で採取された黒曜石は,地質学的にみて,新第三系に由来する地層に含まれていたものである。これらの試料では,自発核分裂飛跡の部分的消失がみられ,この結果,自発核分裂飛跡の計数効率が大幅に減少して,若い年代が得られた。こうした若すぎる年代を補正するため,加熱による誘発核分裂飛跡の消失実験を行ない,補正曲線を各個試料について作成した。フィッション・トラック法による年代測定と,核分裂飛跡消失実験とを通じて以下のような結論を得た。i)自発核分裂飛跡の大きさの分布が単峰性であり,平均径が,誘発核分裂のそれと均しい場合(U1),測定された年代は,黒曜石が噴出した年代,または,臨界温度・熱条件以上に加熱された年代を意味する。ii)自発核分裂飛跡の大きさの分布が単峰性であり,平均径が,誘発核分裂のそれより小さい場合(U2),測定された年代は,黒曜石が噴出した年代,または,加熱された年代より著い年代を示すことになる。この場合,加熱実験により待られた補正曲線を用いて補正された年代が真の年代を示す。この際の加熱は,臨界温度・熱条件以下の加熱を意味する。FT 405,406,407MSの試料から得られたデータによれば,これらの試料は,30〜40℃/10^6yearsのthermal historyをもつと判断され,単に熱的影響だけでなく,二次的加水や,再結晶等の影響による自発核分裂飛跡の部分的消失も考えられる。iii)自発核分裂飛跡の大きさの分布が二峰性の場合(B),大きい飛跡の分布の平均径に基づいて得られる年代は,加熱された時から現在までの時間を示し,小さい飛跡の分布の平均径に基づいて得られる年代は,噴出から加熱までの時間の縮小された時間を示す。後者の年代をii)で述べた補正をほどこして得られる年代が,およその噴出した時から加熱された時までの時間を示す。結局,加熱から現在までの年代と,補正された噴出から加熱までの年代とを合計した年代が噴出年代を示すことになる。この場合の加熱もii)と同様,臨界温度一時間条件以下である。iv)核分裂飛跡の平均径の減少とそれに由来する飛跡密度の減少は一次関係ではない。この事実は,二次的(熱,加水等による)影響が単に,飛跡距離の一次関数的減少に帰結するのではなく,飛跡の三次元的な物理化学的変性に帰結することを意味する。この現象を他の天然鉱物・ガラスについて検討する必要がある。v)核分裂飛跡の二次的変性を厳密に究明することによって,その試料の経てきたthemal historyを解明することが可能である。そのためには,長期的な加熱による飛跡消失実験を行なう必要がある。
著者
高橋 正樹 野口 高明 田切 美智雄
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.65-74, 1995-11-30
被引用文献数
2

18〜12 Maの東北日本に出現するアイスランダイトは, 高K_2O量・Ce/Yb比タイプと低K_2O量・Ce/Ybの2種類に区分できる。前者は関東地方北部(茂木・大子地域)や北部阿武隈地域(毛無山)に産し, 後者は東北地方中部脊梁地域(古川〜新庄間)に分布する。周辺の苦鉄質火山岩類の化学組成との関係から, 前者はある種の下部地殻物質の部分融解によって, また後者はソレアイト質苦鉄質マグマの結晶分化作用によって生成されたものと推定される。K_2O/TiO_2比は前者で高く後者で低い。これは, 両者における初源マグマの化学組成上の違いを反映しているものと考えられる。前期中新世に生じた, マントル・プリュームの上昇による日本海の急速な拡大と日本列島の移動は, 高温でH_2Oに乏しく還元的な地殻環境と伸長応力場の発達を促し, アイスランダイト質マグマの生成に寄与したものと思われる。
著者
竹越 智 赤松 陽 山田 誠一 杉山 明 清水 正明 木元 好一 佐瀬 和義 石橋 晃睦 久津間 文隆 桂 雄三 石垣 忍 本間 岳史 上野 一夫 滝田 良基 久家 直之 川畑 昭光 関根 勇蔵 藤井 克治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.13, pp.299-311, 1976-12-30
被引用文献数
3

The geology of the south-western region of the Tanzawa massif has remained unresearched except the horizons higher than the Pliocene series. After the writers' previous study on the geology of the crystalline schist region on the Tanzawa massif, the above mentioned area was surveyed. In this area the following formations are distributed; that is the Miocene series (so-called Misaka series) which consists largely of volcanic and pyroclastic rocks, the Pliocene series (the Ashigara group) of conglomerate and sandstone, the Pleistocene series (the Yufune formation or the Suruga gravel bed) of fluvial deposit, and the Alluvium of thick volcanic ash and river bed deposit. The Miocene series is divided, in ascending order, into the Kurokura formation, the Yozuku formation, the Hirayama formation and the Shirakurazawa member. The former three formations correspond to the westward extensions of those in the crystalline schist region, and they are superposed one upon the other conforrnably. They strike from NE to SW and dip northward, but are overturned. The Shirakurazawa member is distributed only in the surveyed area. Though it is contiguous to the Yozuku and the Hirayama formations with faults, it may be, judging from its lithofacies, the uppermost horizon of the Miocene series in this area. It strikes E-W and shows a synclinal structure as a whole. It is overturned near the northern marginal fault. The Kurokura formation and the lower part of the Yozuku formation are changed into crystalline schists with bedding schistosity. The fault, which separates the Miocene series from the Pliocene series, has been considered to be one continuous reverse fault and was named the Kannawa fault. But it may be a complex of two or three systems of fault judging from the phenomena observed at several very points and also from the geometry as a whole.
著者
岡田 篤正
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.15-30, 1992-12-15
被引用文献数
20

右横ずれが卓越した中央構造線活断層系は全体として直線状に延び, 地形的に明瞭に連続するが, 所々には間隙, ステップ, 屈曲部, 分岐部などの不連続部がある。この分岐のうち, とくに明瞭な横「し」の字状をなす構造については重視し, 上述の特徴に加えて, 地区毎の走向・変位速度・最新活動時期・活動間隔・地震との関係 などのMTL活断層系の諸性質を再検討して, 8セグメントと1つの不活動区域に分けた。活動的なセグメントはさらに2・3に細分される部分もあるが, こうした結果を第1図と第1表に示した。徳島県でのトレンチ調査によれば, MTL活断層系の最新活動は16世紀以降の歴史時代である。それは1596(慶長1)年大地震である可能性が大きく, 少なくともVaの部分が震源断層であったらしいが, その活動範囲はまだ詳しく判明していない。他のセグメントでも, 歴史時代の別の地震を起こした可能性が大きい。
著者
塩野 清治
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.18, pp.155-174, 1980-03-30

西南日本の地殻内地震及び地殻下地震のテクトニックな意味を,特に中央構造線(MTL)沿いの断層運動との関係において議論した。MTL沿いの断層運動の活発な部分(紀伊半島西部〜四国中部)では,地殻内における,小又は微小地震の活動が活発であり,MTLは,広い意味で,南側の地震活動域と北側の低活動域の間の境界となっている。これらの小地震によって解放される歪は,小規模なものであるため,MTLの断層運動が活発な部分のまわりに,過去1,000年の間に大地震が発生していない事実は,近い将来における大地震の発生を示す「地震の空白域」として,認識されるべきであろう。地殻下地震の分布や地震波高速度層の分布から,high-Q zoneの分布を参考しつつ,南海トラフからもぐりこんでいるフィリピン海プレートの形を推定した。その形は,MTLの断層運動と密接な関係があり,(1)断層運動の活発な所では,もぐりこむプレートのの先端は,MTLの外側にある,(2)断層運動が不活発な所では,プレートの先端は,MTLの下を横切って内側までのびているという見かけ上の位置関係がみられる。この関係は,MTLより外側の大陸プレートがMTL沿いに,内側のプレートからdecoupleするか,又は,decoupleしないかという関係におきかえて説明することができた。
著者
高橋 学
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.51, pp.127-134, 1998-03-24
被引用文献数
3

兵庫県南部地震の被災状況と表層地盤との関わりについて環境考古学の視点から検討した。その結果, 震度VIIの分布域は, 縄文海進最盛期の海域や, かつて潟湖であった地域とと密接な関わりがあることが判明した。また, 死亡者の発生場所, あるいは壊滅的に住宅が破壊された場所は, 地表面下数m以内に埋没した旧河道と密接な関わりが認められた。このような地表面下数m以内の表層地盤に関する情報は, 遺跡の発掘調査の際に得ることができる。遺跡の発掘調査を文化財保護といった観点に限定せず, 土地開発と災害の歴史を明らかにするという視点からも観ていく必要がある。ただし, 被害の集中した場所が, 住宅地として開発されていった背景には, 自然環境に関する知識の欠如だけでなく, 高度経済成長期における都市への人口集中など社会, 経済的理由が存在したと考えられる。
著者
山崎 晴雄 佃 栄吉 奥村 晃史 衣笠 善博 岡田 篤正 中田 高 堤 浩之 長谷川 修一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.129-142, 1992-12-15
被引用文献数
6

中央構造線(MTL)は西南口本を南北に二分する主要な地質構造線である。この断層は第四紀における日本で最大級の右横ずれ活断層でもある。その活発な活動度にも拘らず, MTLに沿っては歴史地震の発生は知られていない。長期的な地震予知や災害アセスメントに有効な最近の地質時代における断層の運動史を知るため, 1988年の夏中央構造線活断層系の一部である西条市近傍の岡村断層でトレンチ発掘調査を行なった。5つの小トレンチとそれらを繋ぐ細長い溝で構成される調査トレンチでは, 更新世末から歴史時代までの5つの地層ユニットと, それらの顕著な断層変位が認められた。各ユニットの堆積時期は地層中に含まれる有機物試料の^<14>C年代と土器片の考古学的編年によって決定された。断層は2000年前〜4世紀に堆積したIIIb層を切り, 7世紀以降に堆積したIIIc層に覆われるので最終活動時期は4〜7世紀と推定された。この値は1984年に行なわれた同じ断層の発掘調査結果と一致する。また, これ以外の断層活動時期も地層の不整合や変形構造に基づいて識別された。
著者
佐藤 博明
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.46, pp.115-125, 1996-09-20
被引用文献数
4

雲仙普賢岳の1991年噴出物の岩石組織の3つの側面(斜長石斑晶の累帯構造, 気泡組織, 石基結晶度)について記述し, ドームを形成するデイサイトマグマの噴火の引き金, 脱ガス過程, 結晶作用についての制約条件について議論した。1つ目の側面は斜長石斑晶の累帯構造であり, それは逆累帯構造を呈するリムでMgO, FeO^*量が増加しており, 噴火直前に珪長質の斑状マグマとより苦鉄質な無斑晶質マグマの混合が生じたことを示している。雲仙普賢岳は南北張力場の地溝帯中にあり, 火山下のマグマポケットは東西方向に伸びた割れ目状の形態をとっていると考えられる。これまでに知られている室内実験によると, マグマで充たされた2つの割れ目が接近すると互いに近づいて合体する傾向があり, いったん合体すると割れ目の上昇速度は急増する。雲仙普賢岳1991年噴火の場合もマグマで充たされた割れ目の合体が, マグマポケットの上昇のきっかけとなり5月20日の溶岩ドーム出現に至ったと考えると, 1989年の地震発生-マグマ混合現象-ドーム噴出のタイミングやマグマ混合現象がうまく説明される。雲仙普賢岳ではドーム噴火が爆発的なプリニー式噴火に伴っておらず, 上部地殻でマグマの上昇速度が小さく, マグマが地表に至る前に揮発性成分の脱ガスが効果的に生じていると考えられる。雲仙普賢岳の1991年噴出物の気泡組織は多様な変形構造を呈しており, 粘性の高い溶岩の流動により気泡の変形が生じている。溶岩の含水量は気泡の変形度と関係があり, 火道中での粘性の高い溶岩の脱ガスが, 溶岩の流動により気泡の連結が促進され見掛けのガス透過率が高まったために生じた可能性が考えられる。1991年噴出物の含水量は全岩で0.2-0.5wt%であり, 1気圧での飽和含水量(0.1wt%)よりも大きい。一方, 火砕流発生を伴わなかった1792年, 1663年溶岩の含水量は0.1wt%以下である。溶岩の石基の結晶度についてみると, 1991年溶岩は20-30Vol%であり, 1792年溶岩1663年溶岩では結晶度が約50%と明瞭な違いが認められた。1991年溶岩は1792年溶岩よりも粘性が高く, 脱ガスが不十分であったために石基ガラス中の高い含水量を生じ, 結晶作用が不十分にしか進行しなかった。粘性の高い溶岩の不完全な脱ガスが溶岩の自爆性, ひいては火砕流発生の条件となっていることが考えられる。
著者
大藤 茂 佐々木 みぎわ
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.50, pp.159-176, 1998-07-31
被引用文献数
12

岩質, 古生物地理および剪断帯の分布と運動像から, 東アジアの各地帯とオーストラリアとの中〜古生代の運動史を次の様に考えた。(1)カンブリア-オルドビス紀の各地帯は熱帯〜亜熱帯区に位置し, オルドビス紀には, 筆石の太平洋区と大西洋区とが識別される。(2)各地帯の上部オルドビス〜デボン系は, サンゴ礁の形成可能な熱帯地域にほぼ東西に配列する, 火山弧近辺の堆積物からなる。(3)上記火山弧列は, 後期デボン紀〜ペルム紀に時計回り回転し, オーストラリアは南極域へ, アンガラ剛塊は北半球の温帯域へ移動した。北中国地塊, 南中国地塊および日本は, 熱帯のカタイシア植物区にとどまった。(4)三畳紀には南北中国地塊の東部が衝突し, 朝鮮半島の臨津江ナップが形成された。(5)南中国地塊は北中国地塊と癒合した後, モンゴル-オホーツク海を消滅させつつ北上し, 前期白亜紀までにはアンガラ剛塊と衝突した。上記の運動の中での, 日本の位置づけも議論した。
著者
徳岡 隆夫 大西 郁夫 高安 克已 三梨 昂
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.36, pp.15-34, 1990-11-30
被引用文献数
22

中海・宍道湖の自然史を, 8葉の古地理図として示した。完新統堆積前には西の大社湾に注ぐ古宍道川と東の美保湾に注ぐ二つの水系が存在した。縄文海進はこれらの二つの水系にそってすすみ, 古宍道湾と古中海湾が形成された。縄文海進高潮期には古宍道湾の中央部が埋め立てられ, 東の水域は古宍道湖となり, やがて西の中海湾へと排水するようになり, 現在の中海・宍道湖の原型ができあがった。宍道湖宅はA.D. 1600年頃を境としてそれまでの汽水環境から淡水環境へと変わった。中海では環境変化が複雑だが, 米子湾でみるとA.D. 1600年頃までは出雲国風土記にも示されている夜見島の南に美保湾に通じる水道が断続的に存在したが, その後は閉鎖的環境が急速に進んだ。これらの環境変化は中国山地の人為的な荒廃による土砂の大量流出によって起こったが, 中世の温暖期をへて, A.D. 1600年頃を中心とする寒冷期にいたる地球規模の環境変化が背景となっているものと考えられる。^<210>Pb, ^<137>Cs年代測定および過去25年間の地形変化からそれぞれ求められた宍道湖での埋積量は約0.1/gr/cm^2程度であり, 中海ではその1/3と見積もられる。
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.54, pp.1-195,巻頭2p, 1999-12