著者
坂井 卓 岡田 博有
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.48, pp.7-28, 1997-06-30
被引用文献数
2

九州の中軸帯および黒瀬川構造帯には白亜紀堆積盆が広く発達する。その層序学的・堆積学的ならびに構造地質学的諸特徴には東アジアの活動的縁辺域で生じた白亜紀のテクトニクス変化が記録されている。黒瀬川構造帯の下部白亜紀系は断層規制を受けた堆積盆に形成され, 非海成〜浅海相ならびにタービダイト相からなる二つの異なるタイプのシークェンスが識別できる。これらは, 多くの不整合を伴って顕著な岩相変化を示す。このような堆積盆は, 分断された黒瀬川古陸上に形成された横ずれ構造盆にあたり, 白亜紀前期にカリフォルニア型のトランスフォーム縁辺が推定される。このことは黒瀬川構造帯の堆積盆が北北西-南南東の左横ずれ断層を伴うタンル-断層システムに属していたことを示唆する。一方, 中軸帯の後期白亜紀堆積盆は非海成〜浅海性相(御所浦・御船層群)と浅海〜タービダイト相(大野川・姫浦層群)の二つの異なるシークェンスからなる。前者は先白亜紀の構造に対し, オーバーラップの層序関係を示し, ベンチ状あるいは陸棚性前弧海盆に比較できる。後者は軸流運搬のタービダイト相が卓越し, 伸長性堆積盆を示す。堆積作用と変形スタイルの特徴から, 大野川, 姫浦層群はそれぞれ横ずれ構造盆, 断層規制を受けた陸棚盆に相当する。黒瀬川構造帯堆積盆の北方への顕著な堆積盆の移動は, 縫合性島弧地塊と前期白亜紀に隣接していたイザナギ・プレートの間のトランスフォーム過程に関連したと推定される。引き続く中軸帯の堆積盆のタイプの時空的変化は, 後期白亜紀のクラ, 太平洋プレートの収れん運動の変化に対応するだろう。

言及状況

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こんな論文どうですか? 九州の中軸帯および黒瀬川構造帯の白亜紀堆積盆の堆積作用とテクトニクス(坂井 卓ほか),1997 http://id.CiNii.jp/MrMCL

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