著者
野上 健治 吉田 稔 小坂 丈予
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.71-77, 1993-08-15
参考文献数
10
被引用文献数
6

薩摩硫黄島東温泉沿岸では温泉水と海水とが様々な比率で混合した結果,極微細なSiO_2-Al_2O_3-Fe_2O_3-H_2O系の低結晶質沈殿物が生成しており,海面が様々な色調を呈している.これらの変色海水について,母液及び沈殿物のSi-Fe-Al_3成分の化学組成及び生成条件,特にpHとの関係について検討を行った.その結果,沈殿物の化学組成は温泉水と海水との混合溶液のpHに強く依存し,pHが2前後では沈殿物中のFeの割合は低いが,pHが3〜5の範囲ではFeの割合が相対的に高くなる.更にpHが上昇するとAlの割合が相対的に高くなる.また変色海水の色調はpHが2前後の時は透明から乳白色であるが,pHが3〜5の時には黄褐色である.更にpHが上昇すると色調は再び白色系になり,沈殿物中のFeの割合によって色調が変化する.これらに対して,各採取地点における沈殿物と母液との混合物の化学組成は東温泉から湧出している温泉水のそれと殆ど同じであり,見かけ上沈殿の生成過程においてSi,Fe,Alの3成分は分別していない.

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