著者
河村 信夫
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.986-988, 1979-09-20

大型の人体寄生虫は今日の日本に於いてはまれになり,小型の寄生虫でも生命に影響を及ぼすようなものはめったに見られない. また泌尿生殖器は消化器等にくらべて,寄生虫感染の起こりにくい臓器でもある. しかし一旦,低開発国に目をむけると,アフリカのピルハルツ住血吸虫,ヨーロッパのエキノコックス等,生命に危険を及ぼすものがあり,アフリカ,中近東,東南アジア,中南米の寄生虫疾患罹患率は,考えられぬ程高い. また今迄あまり問題にされなかった寄生虫が,免疫不全症候群,担癌患者,移植患者などでは重篤な感染を起こす例もみられるようになった. さらに,多くの人には生命に影響を与えず,症状も起こさぬので放置されているような寄生虫の感染は,文明国でも拡がり,一部の人だけが発症するという状態を作っている. さらに最近の交通の発達,海外へ往来する日本人の増加は,想像しなかったような外国の寄生虫が急速に日本に持ち込まれる状態をもたらすようになった. 一方に於いて抗寄生虫薬は副作用の強いものが多く,薬害訴訟などが広く行われはじめると,メーカーも製造を中止てしまったり,国内での発売を停止されたりということがおこってきている. 例えばキニーネ,塩酸クロロキンが国内で使えなくなったことは,海外でマラリアに罹患した日本人の治療に非常に不便をもたらしている. 外国で作った薬品の持ち込みがみとめられぬとしたら,罹患した日本人は外国へ行って治療Lてもらうとか,または国内でしずかに死ぬのを持つということになる. このような現状の下で,泌尿器科医が稀に遭遇する寄生虫疾患についての知識をまとめ,かつ,演者の数年来の研究の結果もあわせて発表することにした.

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