- 著者
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森田 隆
- 出版者
- 社団法人日本泌尿器科学会
- 雑誌
- 日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
- 巻号頁・発行日
- vol.75, no.8, pp.1293-1298, 1984-08-20
最近、上部尿路の閉塞を知る手段として、WhitakarによるPressure Flow Studyが行なわれるようになって来た。上部尿路は大きく腎孟と尿管から成り、腎孟がある一定の内腔を有するのに対し、尿管は1本の管であり、両者の流体力学的特性は当然異なると考えなければならない。そこでPressure Flow Studyを理解するための基礎的検討として、尿管内に一定量の生理食塩水を流した場合の尿管の抵抗を測定した。8頭の成犬を用い、5Fr.ポリエチレンカテーテルを腎瘻の要領で腎孟尿管移行部まで挿入しハーバード社注入器で0.43、1.08、2.16、5.40、10.80ml/minの注入量で尿管内に生理食塩水を持続注入した時の尿管内圧を記録して、尿管抵抗を評価した。またノルアドレナリン、アセチルコリンを投与して尿管蠕動が頻発した状態においても検討した。尿管蠕動が発生していない状態の犬尿管全長の低抗値は、5Fr.40cmのポリエチレンカテーテルの低抗値とほとんど同じ1.16〜1.25cmH_2O/ml/minであった。しかし、ノルアドレナリン、アセチルコリンを投与して尿管蠕動を発生させると、尿管内流量の多少によって尿管抵抗値は著明に変化した。即ち2.16ml/min程度の流量まで、すなわち尿管がbolusを作って閉じている状態では尿管抵抗は著明に高く、尿管蠕動の果たす役割が重要と思われた。しかし、尿管内流量が5.4ml/min以上で、尿管が円柱となって尿が輸送される状態では、尿管蠕動が頻発していても、尿管低抗値は蠕動の発生していないコントロールの状態とほぼ同じで、この場合は尿管の壁のtonusが尿管低抗値を決定すると考えられた。