- 著者
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森田 隆
- 出版者
- 社団法人日本泌尿器科学会
- 雑誌
- 日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
- 巻号頁・発行日
- vol.82, no.1, pp.52-60, 1991-01-20
- 被引用文献数
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糖尿病にみられる膀胱機能障害は,末梢神経障害に起因する。膀胱の収縮には副交感神経ムスカリン受容体が重要な役割を演じているため,私は,Streptozotocinの静注により発症させた糖尿病ラット膀胱において,ムスカリン受容体の特性を調べ,正常膀胱と比較した。^3H-QNBで標識される膀胱ムスカリン受容体の量は糖尿病群では対照群に比し有意に多いことが判明したが,^3H-QNBの解離定数は両群とも同様であった。ムスカリン受容体刺激剤や抑制薬剤は,^3H-QNBの結合を抑制したが,抑制定数は糖尿病群と対照群で同様であり,強さの順番はbethanechol>pirenzepine>carbamylcholine>acetylcholine>atropineであった。これらの事実は,ラット膀胱のムスカリン受容体のサブタイプはM1ではないであろうこと,糖尿病時にはムスカリン受容体の量が増えることを示唆している。ムスカリン受容体刺激剤は対照群に比べ,糖尿病群で膀胱体部muscle stripの有意に欠きた収縮反応を引き起こした。ED_50値の順番は糖尿病群,対照群ともbethanechol>carbamylcholine>acetylcholineであり,抑制定数の結果とよく一致していた。この結果は,糖尿病ラット膀胱のムスカリン受容体の生化学的変化と直接的に関連することを示している。