- 著者
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今井 強一
山中 英寿
- 出版者
- 社団法人日本泌尿器科学会
- 雑誌
- 日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
- 巻号頁・発行日
- vol.84, no.7, pp.1175-1187, 1993-07-20
- 被引用文献数
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8
2
前立腺癌のスクリーニング検査として,症状・直腸診(DRE)・transrectal ultrasonography(TRUS)・prostate specific antigen(PSA)の評価と,mass screening(前立腺癌集団検診,実検)の現状と将来について検討した.早期前立腺癌発見のためには,DREはTRUSに比べspecificityに優れるが,sensitivityに劣る傾向にあった.PSAは前立腺癌症例の経過観察には優れるが,specificityやsensitivityに劣るが,状況に合わせたcut off値の設定が良好な結果を招くと思えた.また,それぞれの検査法で発見できる前立腺癌は必ずしも同一ではないと思われる.現段階で完全な前立腺癌スクリーニング検査はなく,高い発見率を期待するならば,これら3方法を同時に使用するのが良いであろう.診断医はそれぞれの検査法の特性を熟知し,各施設に適した検査chartを持つことが肝要である.本邦での前立腺癌の集団検診は開発段階をほぼ終了し,試行段階に入る所である.しかし,試行段階では5から10万人規模の無作為割り付けによる研究,ないしはそれに準ずる研究を行うのが望ましい.この施行段階による検討を行うためには全国規模での実検体制が組織されなければならない.