著者
古屋 喜美代
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.12-19, 1996-08-01

子どもは文字を読み始める前から, 自分で絵本を開き, 絵を見てその内容を言語で表現し始める。この初期の絵本読み場面について, 1事例について2歳から4歳まで縦断的に約月1回資料を収集し, 以下の点について検討を加えた。第1点は, 「語り」についての子どもの認識の発達であり, 第2点は, 子どもがどのように登場人物とかかわっているかである。この2点から, 絵を見て絵本を読む時期には次の4つの発達的段階が見いだされた。任)絵本を「読む役割」に興味をもって, 絵を見て物語の内容を表現し始める。他者に向けて言語化するという意識は弱い。(2)セリフと母親に直接語りかけるような話し言葉的ナレーションで物語を表現し, 始まりと終わりを宣言する必要を理解している。ここまでの段階では, 子どもは物語の中に引き込まれた発話をすることがあり, 物語世界の外にいる自分を登場人物と対立的に意識してとらえてはいないと考えられる。(3)子どもは絵本の登場人物に対する自分自身の思いを, 感想や疑問として表現する。このことは, 子どもが物語世界の外にいる「読者」としての自己の立場を認識していることを示唆する。(4)セリフと書き言葉的ナレーションで表現する。子どもは作者の語り口をとる「語り手」としての自己を意識し, その語り口を保持する。

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幼児の絵本読み場面における「語り」の発達と登場人物との関係 : 2歳から4歳までの縦断的事例研究 http://t.co/Svtu1Ga8

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