- 著者
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藤村 恒太
横矢 直和
山本 和彦
- 出版者
- 一般社団法人電子情報通信学会
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
- 巻号頁・発行日
- vol.76, no.2, pp.382-390, 1993-02-25
- 被引用文献数
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25
本論文では,医用画像処理における今後の重要な課題の一つである動画像処理のアプローチとして,医用分野で大半を占める形状およびその動き・変形が滑らかな非剛体物体の動画像を対象とした物体の追跡と動きの解析について述べる.物体の輪郭形状に対するフレーム内とフレーム間での制約をエネルギー関数として定義した動的輪郭モデルを用い,多重スケールでの動的計画法を用いたエネルギー最小化により対象物体の輪郭を抽出・追跡し,その動きを解析する.ここで提案する多重スケールでの動的計画法は,スケールに応じて動的計画法の探索近傍を変化させるもので,粗いスケールでは粗い近傍を,細かいスケールでは細かい近傍を定義し,粗いスケールから細かいスケールへとエネルギーの最小化を行う.これによって物体の大きな動き・変形に対処することができる.本手法を「条件付け学習の神経機構の解明を目的とするナメクジの行動解析」の動画像と超音波心臓動画像に適用し,非剛体物体追跡の有効性を確認した.なお,前者の適用例では,動きの解析として,輪郭に沿った曲率の正の極大点を物体の変形に不変な特徴として抽出し.その移動量を計測した.これによって,物体の大まかな動きの測定が可能となった.