著者
中村 善一 豊田 順一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.77, no.3, pp.510-518, 1994-03-25
被引用文献数
12

筆跡から個人性を機械的,客観的に抽出することは,筆者認識をコンピュータで自動的に行うための基礎的な課題である.本論文では,オンラインで入力された筆跡に現れる個人性を.書写技能に基づく特性により抽出することを提案する.筆跡に個人性が現れるのは,各個人が習得している書写技能に個人差があるためと考え,書写技能に基づいて機械的に抽出可能な特性値を定義した.これら特性値が個人性を表すかどうかを評価するために,4人の筆者が「チキュウ」という文字をタブレット上の一定枠内に筆記としたサンプル各々50個に対して特性値を抽出し,各特性値ごとに筆者4水準の一元配置分散分析を行った.その結果,230個の特性値のうち223個が有意水準5%で有意となり,個人性を表すことが確認できた.更に,特性値の個人内でのばらつき,特性値間の相関関係を変異係数(標準偏差/平均)と相関係数を求めることにより明らかにした.また,定義した特性値を用いた筆者認識の可能性を検討するために,同じサンプルについて識別実験と照合実験を行った.その結果,識別率100%,誤棄却率,誤照合率はともに0%であった.

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