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スイレン目の花の比較形態学的研究II : ヒツジグサの花の内部形態
著者
伊藤 元己
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理
(
ISSN:00016799
)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.94-102, 1984-05-29
スイレン科の植物と単子葉植物との関係についてはよく議論される.一般的には双子葉植物として分類されているが双子葉植物と単子葉植物を結ぶ位置にあるという意見や単子葉植物に入れるべきだという意見も出されている.これはスイレン科の植物が単子葉植物的な特長をいくつか持つとされるからである.単子葉植物的な特徴のなかで胚と実生については以前(分類地理33巻143-148)詳しくは議論したのでそちらを参照にしていただきたい.スイレン属では花の維管束走向は複雑で今までの研究では十分にその基本的構造が理解されたとはいいがたい状況である.今回とりあげた材料のヒツジグサはスイレン属に属する多年生水草で北半球の暖温帯から冷温帯域に広く分布する種である.この種はスイレン属のなかでは小形の植物で花も直径1-2cmで,植物園の温室の水槽によく植えられている熱帯スイレンの仲間の花と比べてはるかに小さい.一般的には花は大きくなるとその中を走る維管束の数は増えそのため維管束走向も複雑になる.(CARLOUIST 1969).それで比較的単純な維管束走向を有するヒツジグサで詳しい観察をおこなった.上記の単子葉植物的特徴のなかで重要な特徴として不斉中心柱的な維管束配列をとりあげて単子葉植物との類縁関係について議論されることが多い.しかしながらスイレン属におけるWEIDLICHによる茎の維管束の観察や前回報告した花の維管束の形態の詳しい観察によると一見,不斉中心柱的と思われるのはスイレン属において維管束が特殊化しているために起因していると思われる.すなわち,維管束が原形成層から分化するとき木部柔組織により分断されサテライト管束と呼ばれる維管束が原生木部から分離された形で形成されるためである. 前回の報告ではこの一本の原生木部から分化する維管束複合体,すなわち1-6個のサテライト管束と原生木部が一般の被子植物と一本の維管束と相同であると結論した.このような特殊な維管束を持つために成熟時の花での観察だけでは維管束系の基本構造は複雑すぎてよくわからない.特にスイレン属では花床下部にreceptacular plexusと呼ばれる維管束が複雑にからみあった構造が存在する.このreceptacular plexusはスイレン亜科の他の属-コウホネ属,オニバス属,オオオニバス属,バルクラヤ属(現在はHydrostemmaという属名が使われる.)なおにもみられる.しかしながらこのような特徴にはジュンサイ亜科のジュンサイ属やフサジュンサイ層ではみられない.またスイレン科に近縁であると推測されるハス科においてもこのような構造はみられない.そこでスイレン科の系統を考える上でもこのreceptacular plexusの構造の理解が重要であると思われる.そこで成熟花の観察に加え維管束系の形成過程を追跡することにより花の基本構造の解明を試みた.花柄からあがってきた維管束はreceptacular plexusと呼ばれる構造を形成する.このplexusからガクへの維管束および花弁とおずいへ維管束を出す子房壁管束が出される.成熟時の花ではこのreeptacular plexusは複雑で構造がよく認識できない.しかし花芽の形成時からの分化過程の追跡によりplexusはgridling bundleと呼ばれるリング状の維管束とこの維管束から内側に向かって分枝される不規則な維管束から形成されていることが明らかになった.花弁,雄ずいへの維管束は子房壁管束から分枝されるがこのときには明確なギャップは形成されない.すなわち基本的にはopen vascular systemで形成されている
言及状況
変動(ピーク前後)
変動(月別)
分布
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花弁にもきちんと維管束は存在します。 茎、花柄とあがってきた維管束は、子房壁管束が形成されます。 ここからがくへの維管束および花弁と雄ずいへ分枝します。 花の種類によっても異なり、いろいろと形態が研究されているようです。 参考までに http://ci.nii.ac.jp/naid/110003760191 ☆ 追記です。 形態学的に、花は葉から進化したものなの ...
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https://ci.nii.ac.jp/naid/110003760191
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