- 著者
-
田村 道夫
- 出版者
- 日本植物分類学会
- 雑誌
- 植物分類・地理 (ISSN:00016799)
- 巻号頁・発行日
- vol.42, no.2, pp.177-187, 1991-12
キンポウゲ亜科は痩果をつくり,染色体は長く,クリスマスローズ亜科より進化したと考えられる。フクジュソウ連では胚珠は心皮の両側の縁より生じ,対向帯中央より生じるほかの連とは異なっている。イチリンソウ連は普通花弁をもたないが,Kingdonia,Naravelia,ボタンヅル属(ミヤマハンショウヅル節),オキナグサ属のいくつかの節には花弁がある。キンポウゲ科の花弁は雄蕋の変化したもので,とくにオキナグサ属のものは小さい棍棒状の蜜分泌器官である。イチリンソウ属は世界中に分布し,南半球にもSubgen. Rigida, Subgen. Hepaticifolia, Sect. Crassifolia, Sect. Pulsatilloides, Sect. Archimillifoliaなど分布範囲の狭い固有分類群がある一方,綿毛に被われた小さな痩果をもつアネモネ亜属に属する種などは南米に新しく分布していったものと思われる。キンポウゲ連では,普通花弁が発達するが,モミジカラマツ属は花弁をもたず原始的とみなされる。キンポウゲ属は約600種をもち,本科でもっとも大きく世界中に分布する。イチリンソウ属と同じくSect. Pseudadonisのような南半球の固有分類群がある一方,Sect. Micranthusのように新しく南半球に広がったと思われるものもある。