- 著者
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小泉 源一
- 出版者
- 日本植物分類学会
- 雑誌
- 植物分類,地理
- 巻号頁・発行日
- vol.1, no.1, pp.102-103, 1932
地球上最古の被子植物として一九二三年J. H. HOSKINS氏は北米の石炭紀最下部よりAngiospermophytonを發見せりと云ひしもA. C. SEWARD教授によれば,之はMedulosaの葉柄にしてMyeloxylonなりと云はれ,被子植物の最古のものは矢張りH. THOMAS氏がYorkshireの侏羅紀より發見せる一種の果實是なりと云ふ,然るに1929年G. R. WIELAND氏はアルゼンチンの三疊紀最上部のレ-チツク層よりトネリコ屬(Fraxinus)近似の被子植物の果實を發見したりと稱し,之をFraxinopsis minor及びF. majorの二種として記載せり.若し果して此新屬植物の果實が被子植物のものなりとせば,地球上最古の被子植物は又更に遡りて三疊紀最上部を起源となす事になる.大石氏はWIELAND氏のFraxinopsis果實は一種子双子葉のものに非ずしてPodozamitesのCycadocarpidiumの如く二種子を保有するものと考へたく,之こそWIELAND氏の所謂Hemi-Coniferなるべしと云ふ,それで地球上最古の双子葉植物は又侏羅紀へとひきあがれり.WIELAND氏は又Fraxinopsisと共に産する一のTaeniopteroid leaves亦双子葉植物のものなるべしと云へり.大石氏は此植物の所屬は不明なれども双子葉植物には非るべくStangeria やTaenitisに類せる裸子植物か羊齒類似の植物なるべしと云ひ,南米アルゼンチン,亞弗利加,印度等の三疊紀最上部(レ-チツク)より侏羅下部(リアス)に亙り生存せるものにてRhaetic Post-Gondwana Floraの要素として著甚なるものとし東北大學矢部教授の記念としてYabeiella屬を設立し,次の諸種を包括せしめたり.Yabeiella mareyesica (Geinitz) Oishi. アルゼンチン Y. brackebusohiana (Kurtz) Oishi. 南亞弗利加 Y. Wielandii Oishi. アルゼンチン Y. spathulata Oishi. アルゼンチン Y.? dutoiti Oishi. 南亞弗利加 Y.? crassinervis (Feist) Oishi. 南亞弗利加,印度,濠州(?),新西蘭土(?)