著者
北村 四郎
出版者
日本植物分類学会
雑誌
植物分類・地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.71-80, 1935-05-30

マンシユウガンクビサウ(Carpesium manshuricum KITAMURA) 從來ミヤマガンクビサウ(Carpesium triste MAXIM.)にあてゝあつた大陸の植物で,これを最初にあてた人は C. WINKLER 氏である.Carpesium triste は内地のものが Type であるが丈はあまり高からず葉も小さく長卵形又は長楕圓形であるが,マンシユウガンクビサウは丈高く葉は頗る大きく廣卵形で別種とすべきものである.始め金剛山で澤山採集した時大變大きな葉になつてるなと思つてゐたところ,ソビエツトの M. ILJIN 氏より滿洲の標品をもらひ,これも大きな葉なので研究した.そして別種とする意見になつた. シヲギク(Chrysant hemum shiwogiku KITAMURA) シヲギクは四國,紀伊,伊勢の沿海地方に産する古來有名な菊であり,分類の大家及び細胞學者の研究が澤山あつて,今更形態分布を説明する必要はない.サツマノギク Chrysant hemum ornatum と變種關係に立つてゐたが,植物研究雜誌に書いた如く葉が倒長卵形一倒被針形楔底であるのと,廣卵形一圓形截底であるのとで一見して區別され,分布區域も全く異つてゐる.この二つは種として區別すべきであると私は思ふ.Chrysant hemum marginatum KORTHALS といふ學名がある.これはボルネオで採集されたものとして取り扱はれてゐるが,萬一日本のシヲギクが産地を誤られてゐるのではないかと心配になる.菊科植物では殊に産地が不明である塲合はそれが悪標品であつたりすると鑑定に頗る困難を來す.私は Chrysant hemum marginatum KORTHALS はよくわからんが,今産地のハツキリしたシヲギクに新學名を與へる.將來この事に留意し,Chrysant hemum marginatum KORTHALS を研究し不幸にして,これがシヲギクであつた塲合は古い學名に歸らねばならぬ.四國の沿海のものと紀伊,伊勢の海岸のものとは葉形が後者の方が狹く分裂も淺く頭花も小さいので變種として區別しキノクニシヲギクと云ふ.この研究について澤山の生品や標品を御惠み下さつた田代善太郎氏,吉永虎馬氏,土井美夫氏,孫福正氏に謹んで感謝する. ツイミサウ(Hieracium Tatewakii (KUDO) TATEW. et KITAMURA) 北樺太で採集された植物で故工藤博士が Crepis Tatewakii KUDO として記載された植物である.カリフオルニヤ大學のバブコツク氏は Crepis の專問家であるが,同氏が北大からこの標品を借りて研究し Hieracium だと鑑定した.同氏は Hieracium を鑑定したくはないので館脇博士のところへ尋ねて來た.バブコツク氏は Hieracium triste とちがふかどうか比較してくれといふ.そこで我々は研究したのだがやはり Hieracium である.もつとも Hieracium triste とは全く別物でこれは節が全くちがふ.所屬は ZAHN 氏の分類に依ると Euhieracium, Phyllopoda, Trichophtoylla, Pulmonarea であつて Hieracium vulgatum 群のものである.Hieracium vuigatum 群は LEDEBOUR 氏の Flora Rossicae に既にバイカルやドウリヤに産する事が知られてゐるが今度北樺太まで足をのばした事になつた. ハヤチネウスユキサウ(Leontopodium hayachinense HARA et KITAMURA) この植物は最初ジユネーブのボーベール氏が Leontopodium discolor BEUV. (1909) を出した時,本州早池峯の植物をこれと同定した.次いで武田久吉博士は Lontopodium discolor ではなく Leontopodium alpinum var. hayachinense TAKEDA (1911) であると發表された.其の後ボーベール氏は Leontopodium discolor var. hayachinense としたが Leontopodium discolor とは葉の基部が廣くやゝ葉をだき果實は二倍程大きく花冠と共に毛が生えてゐるので(L. discolor では葉の基部は頗る狹まく果實小さく無毛) 種として區別することにした.原寛氏と相談の結果共著で公けにする.同氏は昨年十二月手紙で研究する樣にすゝめられたが延引した次第である.

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こんな論文どうですか? 日本産菊科新植物IX(北村 四郎),1935 https://t.co/I2JjtvJxIf マンシユウガンクビサウ(Carpesium manshuricum KITAMURA) 從來ミヤマガンクビサウ(Ca…
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