- 著者
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辻 英明
- 出版者
- 日本衛生動物学会
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.1, pp.1-6, 1975
- 被引用文献数
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昆虫には越冬前に特定のステージで発育停止, すなわち休眠に入り, 耐寒性を増加させ, そのステージに特異的な水分含量低下, 粗脂肪含量の増大を示すものが多い。クロゴキブリの大型幼虫は, あらかじめ15℃短日(8時間照明)条件下で飼育すると, 5.5℃低温に90日以上耐えられる。そこで, 脱皮後間もない終令幼虫を15℃短日下で150日間飼育すると, その間脱皮は行われず, 体重の増大に伴い, 含水率の低下, 粗脂肪含有率の増大がみられた。しかしこの変化は15℃短日下に特異的なものではなく, 27℃長日(16時間照明)条件下でも同様の変化がみられた。27℃では短期間で脱皮が起ったがその際には含水率は上昇し, 粗脂肪含有率は低下した。一方, 15℃短日60日間飼育の後27℃長日に戻した場合, 極端な羽化のおくれは認められなかった。又15℃短日に放置すれば, 発育はおそいが400日で半数以上が羽化した。したがって, クロゴキブリ終令幼虫の15℃短日下での予備飼育による耐低温性の獲得は, 休眠を伴っていないと思われる。1令幼虫から15℃短日下で飼育を行うと, ゆっくりではあるが次々と脱皮発育し, 650日で約40%が8令(残りは6∿7令)に達した。この8令幼虫は27℃飼育の8令(27℃では終令)より小型で, 低温下では適温下より脱皮回数が多くなることが暗示された。又15℃短日下では, 20℃短日下でみられたような2令のみに特異的な令期間の延長はみられなかった。しかし, 20℃短日下で得られた2令幼虫が5.5℃に60日間耐えられなかったのに対し, 15℃短日下で得られた2令幼虫は60∿90%生存し, 耐低温性が強まっていることがうかがわれた。