- 著者
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川上 比奈子
- 出版者
- 日本デザイン学会
- 雑誌
- デザイン学研究 (ISSN:09108173)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.6, pp.67-76, 2004-03-31
アイリーン・グレイは、菅原精造から日本漆芸を学び、漆塗り屏風を制作した。建築家に移行した後、住宅「E.1027」において、ジグザグに折れ曲がる窓をデザインし「屏風窓」と名付けた。本稿では、グレイが屏風を建築に展開する契機を探る。彼女の最初の屏風は、伝統的な形式を踏襲した絵画的調度品であったが、やがて漆塗りと屏風の特質によって、立体が浮かび上がって見える幾何学線形の描かれたものが制作される。同時期、屏風に描かれるべき図柄を、多数の小型漆パネルに分解して再構成した屏風が生みだされた。映りこんで見えていただけの立体が、実体として表現されると共に、分解・回転によってできた空隙が屏風の構成要素に加わり、視線も風も遮らないものとなる。空隙は、屏風の既成概念を取り払う切掛けとなり、グレイは、屏風を窓や壁のデザインに展開し、また、新素材の美しさを活用し、住空間に多様性を与えることになった。グレイの屏風は、空間の光や空気を調節するとともに、空間の機能と形も変える変換装置といえる。