- 著者
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菅 靖子
- 出版者
- 日本デザイン学会
- 雑誌
- デザイン学研究 (ISSN:09108173)
- 巻号頁・発行日
- vol.47, no.2, pp.37-46, 2000-07-31
19世紀からポスターの芸術的要素は大衆の趣味向上に役立つことが指摘されてきたが, 両大戦間期イギリスの特徴はこれが実際に教育計画の一端を担ったことである。背景には, モダニズムこそが「良い趣味」, 「良いデサイン」であり, これを解する人が一般大衆の趣味を改善するよう働きかけなければならないとする, 芸術家やエリート層の理想主義的な文化二元論が存在した。当時のポスター芸術のパトロン達も, これと無関係ではなかった。本稿ではまずポスター芸術と趣味論, モダニズム論が当時どのように関連づけられていたかを明らかにし, 次にポスター芸術が児童, 社会を対象に趣味教育の道具として機能した例を具体的に検証する。これを通して, モダンからポストモダンへの過渡期を特徴づけるポスター芸術の存在意義を考察する。