著者
日向 進
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会論文報告集 (ISSN:03871185)
巻号頁・発行日
no.325, pp.144-154, 1983-03-30
被引用文献数
2

寛政2年から同3年にかけての普請記録である大工近江屋吉兵衛の『注文帳』を主な拠り所として, 天明大火直後の京都における町屋普請について考察した。その結果明らかになったのは次の諸点である。(i)大火後に普請された町屋の建築構成は, 規模や各部の高さなどの点において大火前との異同は認められない。しかし, 用材は一般的には松と杉とに限られ, 坪当り工費, 坪当り大工工数は平常時の水準値を下廻っており, いわゆる「仮家建て」として普請されていたところに, 大火直後の普請という特殊な建築事情がうかがえる。(ii)町屋普請の見積り・積算に際しては, 大工工数については「〜人掛」, 工費については「〜匁坪」という表記に示される標準化が成立しており, 一定の規模・質を有する町屋に対応する指標とされていた。(iii)このような生産技術の整備が町屋の量産の上で不可欠であり, そのような生産技術の前提となる建築的類型の成立する時期は享保年間頃と考えられる。

言及状況

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