著者
篠木 嶺二 奥園 誠之
出版者
公益社団法人地盤工学会
雑誌
土質工学会論文報告集 (ISSN:03851621)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, 1978-12-15

本報告は高速道路の, ある切土のり面に起こった地すべり的崩壊事例について, その対策工法の検討を行う際問題になったことがらについて述べている。すなわち, (i)すべり面のせん断強度の考え方, (ii)強度低下の問題点などについての実例を紹介し, 今まで集積された資料をもとに, のり面安定の理論と実際のくい違いによる問題点を報告している。せん断強度を決定する際の問題として, 地すべり粘土が均一な土質ではなく, しかも実際は厚さも薄く岩片を含むことが多いことを挙げている。なお, 土の強度定数についても, 土質試験から求められた強度定数をそのまま用いず, 実際の地すべり断面から逆算した強度定数と対応して, 採用すべき強度定数の値を決定すべきであると述べている。さらに, あるのり面崩壊の例を挙げ, 実際の崩壊形状からすべり面のせん断強さを算定する私案を紹介している。強度低下の原因としては, 地盤が, 乾燥・湿潤繰返しや凍結融解繰返しなどの風化作用を受けてぜい弱化すること, 切土掘削によって応力解放を受けた岩の吸水膨張による急速な強度低下を挙げている。また, 強度低下によってすべりが起こることははっきりしているが, それを裏づけする理論がないため, 崩壊のり面の復旧対策を行う場合, 安定計算による検討は非常にむずかしくなると述べている。

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