著者
志賀 瓏郎 篠崎 謙一
出版者
日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.231-241, 1980
被引用文献数
2

反芻動物の低Mg血症の発症要因として, 泌乳の影響を調べるため, 泌乳羊(L)と非泌乳羊(NL)各2頭ずつに通常飼料(C期)および低Mg・低Ca飼料(E期)を与え, 両者のMg, Ca, Pの出納と血清濃度, 血漿上皮小体ホルモン(PTH)濃度を比較し, 以下の成績を得た. 1) Mg代謝: 実験期間を通じ, Lは, NLに比べ, Mgの吸収率が著明に低く, 尿中排泄率が高く, 一定の乳中分泌があり, 体内残留量は著明に少なく, 血清濃度も著明に低かった. 2) Ca代謝: 実験期間を通じ, Lは, NLに比ベ, Caの吸収率は高かったが, 内因性糞中Ca量が多く, 大量の乳中分泌があり, 体内残留量は著明に少なかった. 血清Ca濃度には, 顕著な差はなかった. 3) P代謝: Lは, 大量の乳中P分泌があり, NLに比べ, 体内残留量が著明に少なく, 血清濃度も低かった. 4) 血漿PTH濃度: LのPTHレベルは, C期には, NLのそれに比べ低い傾向を示し, E期には, 1日目に一過的に上昇した以外は, ほとんど変化しなかった. 一方, E期におけるNLのPTHレベルは, 2つのピークがみられ, 低Caに対する反応を示した. 以上の成績から, 泌乳動物は, 泌乳に伴うCa吸収率の上昇に対する抗高Ca血作用として, 血中PTH濃度の低下が示唆され, このことが, 泌乳動物のMgの利用性を低下させ, 乳中Mg分泌と相まって, 低Mg血症を誘発する可能性があると考えられた. また, Lでは, 低Mg血症により, 血中PTH濃度の上昇が抑制されると考えられた. 謝辞: 稿を終えるにあたり, 本研究の遂行に終始御協力をいただいた長岡彦光氏(現長野県庁), 小湊昭氏(現富山県庁)ほか岩手大学家畜生理学研究室各位, 上皮小体ホルモンの抗血清を御提供下さった農林水産省家畜衛生試験場 林 光昭氏, ならびに同北海道支場佐伯隆清氏に深謝する.

言及状況

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反すう動物の低マグネシウム血症に関する実験的研究 VI  通常飼料及び低マグネシウム・低カルシウム飼料を給与した泌乳羊と非泌乳羊におけるマグネシウム,カルシウム,リン代謝及び血しょう上皮小体... https://t.co/Cp9Mq5tLyj

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